ウクライナ政府軍と親ロシア派の攻防/世界史の動向(15)
ウクライナの政府と親ロシア派とのヘゲモニー争いが熾烈化している。
東部のドネツクでは、26日、親ロシア派の武装集団が空港を制圧し、ウクライナ政府軍が奪還作戦を始めた。
ウクライナ軍は26日、国際空港を占拠していた親ロシア派武装集団に対し空爆を決行したほか、パラシュート部隊による攻撃も実施して、26日中には武装勢力を空港から撤退させた。
ただ、27日もウクライナ軍と親ロ派との戦闘は続いた。
親ロ派は50人以上が死亡したとし、ドネツクの市長は前日からの交戦で民間人2人を含む40人が死亡したと明らかにした。
同空港は市中心部から約10キロ離れた場所に位置し、国際線を持つ東部の拠点だ。交戦で、空港は閉鎖され、航空機が離着陸できない状態になっている。戦線が拡大すれば一般住民が巻き込まれる可能性がある。
ウクライナ当局幹部が朝日新聞に語ったところによると、同日午前3時ごろ、武装した親ロシア派の男たちが空港の敷地を占拠。軍は午後1時ごろから作戦に着手した。同3時現在、敷地内の旧ターミナル付近で戦闘が続いている。親ロシア派の地上からの激しい攻撃で軍は追加部隊を送り込めず、「苦戦を強いられている」という。
親ロシア派が空港制圧 ウクライナ軍は奪還作戦で空爆
25日の大統領選で親欧州派のポロシェンコ元外相の当選が確実になったが、親ロシア派武装勢力も戦闘を収める気配はない。
同氏は過去に、親ロシア派、反ロシア派の両方の政権で閣僚経験がある。
そのためロシアが暫定政権に向けていた執拗な国家主義者との批判から、逃れられる可能性もある。双方の橋渡し役が可能な現実主義者と目されている。
ポロシェンコ氏はキエフで記者会見を開き、「ウクライナ東部の状況改善に向け、ロシアが支援することを望む」と語り、9月前半にロシア首脳らと会談する考えも示した。 同氏は、「国民を保護することは国家機能の1つ」とも述べ、軍事費を拡大する意向を表明した。 ポロシェンコ氏は大統領就任後、最初に東部を訪問する考えを示しており、親ロ派による空港占拠は同氏の訪問を阻止することが狙いだった可能性がある。 25日実施の大統領選挙では、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州では、親ロシア派の妨害で全体の約8割の投票所で投票ができない事態だった。
一方で、「テロリスト」とはいかなる交渉もしないと言明した。
「親ロ派武装集団に対する軍事攻撃はより迅速かつ効果的である必要がある」と指摘し、「反テロリスト作戦は数カ月も続くべきではない。数時間で終わるべきだ」とし、強硬姿勢を鮮明にした。
ロシアは東部親ロ派への作戦停止をウクライナに求めているが、これに応じる気配は全く見せなかった。
ロシアのプーチン大統領は前週末、ウクライナ大統領選について「国民の決定を尊重する」と発言し、ラブロフ外相もこの日、ポロシェンコ氏と対話の用意があると述べた。
しかし、西側諸国は、これまで何度もウクライナ国境付近の軍部隊を撤収させるとしながら実行に移していないとして、ロシアに対し懐疑的な見方を崩していない。
これに対し、ウクライナ軍は、親ロシア派が空港を閉鎖した数時間後には、空港上空に戦闘機を飛来させている。
しかし、ポロシェンコ氏が圧倒的な勝利を収めたことで、ロシアがポロシェンコ氏の正統性を認めないことは難しい。
オバマ米大統領は、27日、ポロシェンコ氏に電話し、ウクライナ新政権が最重要課題とする国の統合に向けて、米政府が全面的に支援することを伝えた。
米大統領がいち早く新政権への支持を表明することによって、ロシアにウクライナ新政権との対話を促したとみられる。
アメリカは、国の指導者が選挙で国民に選ばれることを重視しており、ポロシェンコ氏の正統性を支持する立場に立つ。
しかし、西欧とロシアは、基本的な価値観において異なっている。
ウクライナ情勢の混乱の出口は容易には見つかりそうもない。
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