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2014年5月22日 (木)

「吉田調書」を全面開示して真相解明の一歩に/原発事故の真相(114)

朝日新聞の大スクープである。
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福島第一原発の事故当時の所長・吉田昌郎氏の政府事故調査・検証委員会の調べに答えた「聴取結果書」(吉田調書)である。
事故究明のための一級資料といえよう。
朝日紙上で逐次発表するという。
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朝日新聞が福島原発のスクープをソーシャル予告

久しぶりに朝日新聞が放ったホームランではないか。
長期連載「プロメテウスの罠」(2011年10月~)のような取り組みの成果といえよう。
かつてと比べて朝日新聞は劣化していると思っているが、さすがに「腐っても鯛」(?)である。
⇒2013年10月14日 (月):朝日新聞社はどうなっているのか?/ブランド・企業論(3)

吉田氏は、事故対応に重要な働きをした。
惜しくも2013年7月に亡くなり、ふたたび肉声を聞くことが叶わない人になってしまった。
事故との因果関係は、東電は否定しているが、まったく無関係ということはあり得ないであろう。
⇒2013年7月10日 (水):死の淵の人・イチエフ元所長吉田昌郎さん/追悼(31)

 吉田調書や東電の内部資料によると、15日午前6時15分ごろ、吉田氏が指揮をとる第一原発免震重要棟2階の緊急時対策室に重大な報告が届いた。2号機方向から衝撃音がし、原子炉圧力抑制室の圧力がゼロになったというものだ。2号機の格納容器が破壊され、所員約720人が大量被曝(ひばく)するかもしれないという危機感に現場は包まれた。
 とはいえ、緊急時対策室内の放射線量はほとんど上昇していなかった。この時点で格納容器は破損していないと吉田氏は判断した。
 午前6時42分、吉田氏は前夜に想定した「第二原発への撤退」ではなく、「高線量の場所から一時退避し、すぐに現場に戻れる第一原発構内での待機」を社内のテレビ会議で命令した。「構内の線量の低いエリアで退避すること。その後異常でないことを確認できたら戻ってきてもらう」
 待機場所は「南側でも北側でも線量が落ち着いているところ」と調書には記録されている。安全を確認次第、現場に戻って事故対応を続けると決断したのだ。
 東電が12年に開示したテレビ会議の録画には、緊急時対策室で吉田氏の命令を聞く大勢の所員が映り、幹部社員の姿もあった。しかし、東電はこの場面を「録音していなかった」としており、吉田氏の命令内容はこれまで知ることができなかった。
福島第一の原発所員、命令違反し撤退 吉田調書で判明

東電は、今までこの事実を公表してこなかった、と言うよりも隠蔽してきた。
そういう企業が、電気料を脅迫材料のようにして、原発再稼働を目論んでいるのである。
朝日新聞の報道の通りであるとすれば、企業犯罪ではないか?

「吉田調書」について、次のような説明がある。

政府事故調が吉田氏を聴取した内容を一問一答方式で残した記録。聴取時間は29時間16分(休憩1時間8分を含む)。11年7月22日から11月6日にかけ計13回。そのうち事故原因や初期対応を巡る聴取は11回で、事務局に出向していた検事が聴取役を務めた。場所はサッカー施設Jヴィレッジと免震重要棟。政府事故調が聴取したのは772人で計1479時間。1人あたり約1・9時間。原本は内閣官房に保管されている。
同上

吉田氏は、2011年11月に食道がんが見つかったとされる。
おそらくは体調不良の中で、約1時間の休憩はあるものの、29時間余の事情聴取である。
聴取したのは事務局に出向していた検事ということであるが、過酷な聴取であったと想像できる。
吉田氏の肉声を聞くことはもうできない。
とすれば、肉声がそのまま書き残され、やりとりが録音されているという「吉田調書」は、吉田氏の遺言のようにも思える。

政府事故調は、報告書に一部を紹介するだけで、多くの重要な事実を公表しなかった。
「9割の所員が待機命令に違反して撤退した」という事実は、今まで知られていなかったのである。
政府事故調解散後に調書を引き継いだ政府(菅義偉官房長官)は、閣議後の記者会見で「吉田元所長を含めヒアリングは公開しない」と語り、調書を今後も非公開とする考えを示した。
まさか、特定秘密に相当するというわけでもあるまい。
政府は、政府事故調の資料を公表すべきではないか。

 吉田氏は政府事故調の聴取に対し、聞き取り内容の公開を了承している。調書を非公開とする理由について菅氏は「事故を二度と起こさないように施策を政府をあげて行っている。それ以上でもない」と明言を避けた。政府に保管されているとされる調書は「読んでいない」とした。
菅官房長官、吉田調書は「公開しない」 理由は明言せず

これでは説明になっていない。
しかも、保管されている調書を「読んでいない」というのは、再稼働を進める立場にある者として、不真面目ではないか。

ただ、今朝の記者会見では、含みを残しているようである。

「聴取結果書」(吉田調書)について、開示しない方針を示しながらも、「もしご遺族から違う形の申し出があれば当然(開示を)考えるべきだ」と述べた。
吉田調書「遺族から申し出あれば開示検討」 菅官房長官

「吉田調書」によれば、住民が大量被曝の危機一髪の状態であった。
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140521
朝日新聞5月21日

事実を公開してこそ、真相に近づき、新たな対策の道が開ける。
吉田氏の声を無にするようなことがあってはならないだろう。

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