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2014年5月 5日 (月)

砂川判決が解釈改憲の根拠になるか?/花づな列島復興のためのメモ(326)

集団的自衛権行使をめざす安倍政権は、砂川事件の最高裁判決を根拠にしようとしている。
2014年4月16日 (水):アクロバティックな解釈改憲/花づな列島復興のためのメモ(320)

その倒錯した論理については上記で触れた。
砂川判決を根拠にしようという考えは、高村正彦自民党副総裁らが「限定容認論」として提唱しているものである。
砂川判決とは、1957年に米軍立川基地に立ち入った学生らが逮捕・基礎されたが砂川事件の最高裁判決(1959年)のことである。
争点は、米軍駐留の合憲性などであったが、判決の中で、憲法9条との関係において日本の自衛権について以下のように言及している。

同条(憲法9条)は、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである
(中略)
わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない

文言的には、「自衛権」について「個別的」や「集団的」という区別に言及せずに、「(自国の平和と安全のために)必要な自衛のための措置」を取ることができるとしている。
このことから、集団的自衛権についても、内容によっては憲法上も認められるというのが最高裁判断だ、とするのが「限定容認論」の主張である。

高村氏は、弁護士資格を有する法律のプロである。
そのためかどうかは分からないが、自民党内で一定の支持が広がっているといわれる。

この考え方によれば、例えば、アメリカに行ってアメリカを守るような事例は認められないが、安保法制懇で問題提起されたケース➀「公海におけるアメリカ艦船の防護」については、「(自国の平和と安全のために)必要な自衛のための措置」として行使可能とする。
2014年5月 4日 (日):集団的自衛権の論点/花づな列島復興のためのメモ(325)

「限定容認論」は、集団的自衛権について、全面的に認めるのではなく、国を守るために必要最小限な行為と評価できるものに限って、「限定」的に認めるという考え方といえよう。
この立場からは、集団的自衛権はすべて認められないとしてきた内閣法制局の憲法解釈は、最高裁判決に照らして、自衛権を制限しすぎた、ということになる。

確かに、一定の合理性のある解釈であろう。
しかし、判決そのものが、集団的自衛権の解釈が固まる以前の1959年に出されたものである。
米軍駐留の合憲性が争点になっていた裁判に対する判決であって、集団的自衛権を念頭に書かれたものとはいえない。
歴代の政府見解を変更する根拠としては薄弱と言わざるを得ない。

憲法9条と自衛権をめぐる解釈は、1981年5月29日の政府答弁によって固まったとされ、以後この解釈が踏襲されてきた。

国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利を有しているものとされている。
我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。
なお、我が国は、自衛権の行使に当たつては我が国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することを旨としているのであるから、集団的自衛権の行使が憲法上許されないことによつて不利益が生じるというようなものではない。

つまり、日本は、国連憲章に明記されている個別的自衛権も集団的自衛権も保有しているものの、憲法9条の制約によって、集団的自衛権については行使できない、という立場といえる。
この点は、安倍首相の祖父の岸信介元首相も同じだった。
であるからこそ、岸元首相は、憲法改正に意欲を燃やしたとも言える。

やはり、有識者会議のような機関の見解を元に、一内閣の解釈変更で済ませるのは問題であろう。
堂々と、憲法改正の王道を踏むべきではないか。

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