金融機関の役割と矜持/ブランド・企業論(24)
気持ちのいい季節になった。
先日、早朝の散歩に出掛けたとき、立ち寄ったコンビニで内田康夫『中央構造帯』角川文庫(2011年9月)が目に留まった。
中央構造線とフォッサマグナは、日本列島を大きく分ける大断層である。
フォッサマグナの東側が東北日本、西側が西南日本である。
さらに西南日本は、中央構造線によって、内帯と外帯に分けられる。
日本列島の大規模な地質構造
昔、小出博『日本の河川―-自然史と社会史』東京大学出版会 (1970年)で、この区分の重要性を教えられていたので、タイトルに惹かれて購入した。
塩化ビニル(?)で包まれていて中味は確認できないようになっていたので、帰ってから開いてみると、冒頭に沼津のことが出てくる。
史実かどうか分からないが、終戦時の旧陸軍に起きた事件で、全体の重要な伏線である。
事件は、日本長期産業銀行(日本長期信用銀行(長銀)がモデルと思われる)という政府系の銀行を舞台として起きる。
現実の長銀は、1998年に破綻し、政府により特別公的管理銀行として一時国有化された。
⇒2008年7月19日 (土):旧長銀粉飾決算事件
2000年(平成12年)3月にアメリカの企業再生ファンド・リップルウッドを中心とする投資組合「ニューLTCBパートナーズ」(New LTCB Partners CV)に売却され、6月に『新生銀行』に改称した。
大野木克信元頭取ら旧経営陣3人は、粉飾決算の疑いで起訴されたが、2008年8月に無罪が確定した。
⇒2009年1月26日(月):長銀粉飾決算事件再考
⇒2009年1月27日(火):長銀粉飾決算事件再考②
小説の時期設定は、破たんが避けられそうもない時期だから、1998年頃であろう。
長銀の破たんは、膨大な不良債権が原因である。
その不良債権を、関係会社に付け替えて隠ぺいし、決算を偽装した。挙句に、偽装しきれなくなったのである。
小説で描かれているような出来事は、ほぼ類似のことが実際にあったのであろう。
しかし、長銀と平将門の関係については、大手町の三井物産ビルの東側(旧長銀本店)に、将門の首塚があること以外は創作である。
5月1日のNHKスペシャルで『極点社会~新たな人口減少クライシス』という番組をやっていた。
その関連記事が、「中央公論」誌の2013年12月号に載っているので、図書館で借り出してパラパラとめくってみた。
同号に、「森功の社会事件簿 第9回 みずほ銀行、暴力団融資のさらなる闇」という記事が載っていた。
みずほ銀行の暴力団融資については触れたことがある。
⇒2013年10月9日(水):みずほ銀行の暴力団融資の闇/花づな列島復興のためのメモ(266)
森氏の記事には、オリコ経由の手口が書かれているが、詳しく書かれているわけではない。
統合・合併を繰り返した銀行業界にあって、みずほ銀行は残った数少ないメガバンクである。
自己紹介をするのに、元メガバンクの支店長という男がいる。
メガバンク支店長が何ぼのもんじゃ、と突っ込みを入れたくなるが、聞き流すに留めている。
本当かどうか分からないが、平将門が活躍し終焉した史跡は、中央構造線上に重なるということが、村上春樹『平将門伝説』汲古書院(2001年5月)という本に書いてあるらしい。
村上春樹は、ベストセラー作家とは同姓同名の別人である。
ちょっと興味をそそられたが、Amazonで検索してみると、古書で20,000円の値がついていた。
それでは手が出せない。
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