STAP細胞論文の検証/知的生産の方法(85)
理研によって、STAP論文の不正が認定された。
⇒2014年4月 1日 (火):STAP論文の不正を理研が認定/知的生産の方法(84)
何となく、小保方氏の単独責任としているようで、トカゲのしっぽ切りではないかという見方をする人もいる。
理研の幕引きを図るかのような調査委の報告に納得できない思いを抱いている人は多いのではないか?
科学の信頼性に関わる問題であり、しっかりと厳正に決着をつけるべきだと思う。
「週刊文春」4月3日号の福岡伸一博士の『STAP細胞問題、「論文撤回」だけでは済ませていけない理由。』によれば、小保方氏らの実験のポイントは以下のようである。
1.細胞が初期化されると、眠っていた遺伝子のスイッチがONになる
-iPS細胞の山中伸弥博士の研究との関連
2.遺伝子スイッチのON/OFFうを知らせる緑色の発光
-2008年ノーベル賞下村脩博士の研究との関連
3.免疫細胞の抗体遺伝子の再編成
-1987年のノーベル賞受賞者利根川進博士の研究との関連
あたかも日本人ノーベル賞受賞者の成果を総合するかのようである。
小保方氏らは、細胞を弱酸性溶液につけて、緑色に発光することを発見した。
つまり初期化された細胞である。
この細胞の抗体遺伝子には、再編成の痕跡があり、分化した細胞が初期化されたことを示していた。
細胞を増殖して初期胚に移植すると、その中でも増殖していく。
初期胚が分化していく様子も緑色の発光で確認できるので、外来細胞がどの臓器、どの組織になるかを追跡できる。
STAP細胞は、ES細胞やiPS細胞がなれなかった胎盤細胞にも分化していることが確認された。
この最終的な成果は、理研のサイトに次図のように説明されている。
胚盤胞に注入されたSTAP細胞は、キメラマウスの胎仔部分のみならず、胎盤や卵黄膜などにも分化していることが分かった。
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/
ところが 「STAP細胞」の論文について、理研は「捏造」「改ざん」という厳しい言葉で、不正があったと認定した。
そして、その不正は、筆頭著者の小保方晴子ユニットリーダーが単独で行ったものとした。
小保方氏は、不服申し立てで、理研に対抗するという。
理研は、研究結果を作り上げることを「捏造」、資料を操作し本物でないものに加工することを「改ざん」と定義し、これらに該当すれば研究不正と判断される。
小保方氏は、「捏造」「改ざん」の認定に対して、異議を唱えているわけである。
調査委は、私たちの知りたい「STAP細胞は存在するのか」という疑問については、ミッション外であるとして触れていない。
実験ではリンパ球などに刺激を与えたら、多能性を示す目印である蛍光が現れたという。この現象が研究の出発点になっている。
ただしこの蛍光は、死に際の細胞でも出ることがあり、この現象だけで万能細胞ができたとは言えない。だが理研の調査では、この点にまったく触れていない。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140401145737190
また、上掲誌で福岡博士が、「「胎盤が光るデータ」はどのようにして得られたのだろう?」と投げかけている疑問についても触れていない。
もう一つは「STAP細胞から光るマウスを作った」という、研究の仕上げに当たる実験にトリックがある、という疑惑だ。マウスの実験は若山照彦山梨大教授が行った。小保方晴子氏が若山教授にSTAP細胞を渡したことになっているが、実はそうではなく、マウスの個体を作ることができる何らかの細胞(胚性幹細胞=ES細胞など)だったのでは、という指摘がある。
理研はこの点について「調査対象ではない」としている。しかし若山教授は、保存してあった細胞を外部で分析中。この細胞の調査でES細胞の混入などの事実を突きつけられる可能性もある。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140401145737190
しかし、たとえES細胞が混在していたとしても、胎盤を光らせることはできないのではないか?
この写真のデータも「捏造」されたものなのだろうか?
とすれば、どうやったのか?
それにしても、小保方氏の単独の責任ということはないだろう。
小保方氏がユニットリーダーとはいえ、共著者や共同研究者になっている名だたる研究者(もちろん今回初めて知ったのであり、詳しく知っているわけではない)は、名前だけだったのだろうか?
http://mainichi.jp/select/news/20140402k0000m040174000c.html
名前を連ねるのも成果の分有のためだとしたら、成果主義の弊害とも考えられる。
私たちには、若山照彦山梨大学教授以外は、姿が見えない。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140315070914336
なぜ、これらの人たちが一緒に会見しないのだろうか?
実験ノートの開示をすれば、研究者ならずとも当否の判断がつくのではないか?
理研としては実験ノートも含め、一切をオープンにすべきではないか?
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