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2014年4月29日 (火)

認認介護という現実/ケアの諸問題(6)

日本は平均寿命が女性86.39歳、男性79.64歳にまで伸びている。
⇒2014年4月 6日 (日):平均寿命の延伸と高齢化社会/ケアの諸問題(3)
特別養護老人ホーム(特養)の入所待機が全国で52万人に上ったと報道されている。

特別養護老人ホームは、介護老人福祉施設とも呼ばれ、社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な施設である。
入居の対象となるのは、65歳以上で要介護1~5の認定を受け、常に介護が必要な状態で自宅での介護が困難な人である。
寝たきりや認知症など比較的重度の緊急性の高い人が対象であるが、入所待機が常態化しているのでは本来の趣旨に合わないだろう。

厚労省は、施設から在宅へという大方針を打ち出している。
その中核的なしくみが、地域包括ケアシステムであるが、十全に機能するためにはハードルがある。
⇒2014年4月14日 (月):地域包括ケアシステムの理念と現実/ケアの諸問題(4)

平均寿命が延びるとともに、在宅介護の担い手が80歳代ということも決して珍しいことではなくなってくる。
老齢者の介護をする人も老齢者であるという老老介護である。
最近は認知症になった人の介護を認知症の人が行う例も増えているという。
すなわち、認認介護である。

認認介護でどのようなことが起きているか?
具体的な事例を見てみよう。
去年の夏も異常に暑い日が多かった。

東京都港区高輪の民家1階で8月12日、朝香友治さん(87)と妻の和子さん(78)が熱中症の症状で倒れているのが見つかり、和子さんが死亡した。認知症だった朝香さんを介護する和子さんも10日ほど前に認知症と診断され、「認認介護」に陥っていた。2階では足が不自由だった朝香さんの兄、良一さん(89)も腐乱した遺体で発見された。同居していた朝香さんの次男(45)とはすれ違いの生活で、次男がいたことで行政サービスの対象外となる悲運も重なり、最悪の結末を迎えた。
・・・・・・
 警視庁高輪署によると、朝香さん夫婦には熱中症による脱水症状がみられ、和子さんは搬送先の病院で死亡が確認された。良一さんは司法解剖の結果、死後3~4週間たっており、死因は特定されなかった。
・・・・・・
 近所の住民らによると、良一さんと、認知症を患っていた朝香さんの2人を献身的に世話していたのは、高齢の和子さんだった。炊事、洗濯、掃除をすべて一人でこなし、3日おきに近くのスーパーで買い物をし、両手に袋を抱えて帰る姿が目撃されていた。
 朝香さんは10年ほど前に認知症になるまでは町内会に積極的に関わっていたが、最近は和子さんも近所付き合いからは距離を置くようになっていた。和子さんと同じ接骨院に通っていた主婦(73)は「『膝が悪くなって、出歩くのが大変』と言っていて、苦労しているんだと思った」としのんだ。
http://sankei.jp.msn.com/life/print/130830/trd13083021270019-c.htm

先日も、認知症高齢者が起こした列車事故について、遺族の責任を認定し、損害賠償の支払いを命じる控訴審判決が出た。
私の感覚では、介護の現実を分かっていない判決のように思える。
在宅介護をしようという人が減るであろうことは間違いない。

4月28日の日本経済新聞のコラム「春秋」が、介護の担い手の負担に対する手助けや目配りは十分か、と問題提起している。介護確保法が審議されているが、問題解消にはほど遠いだろう。
⇒2014年2月 6日 (木):揺れる介護福祉士養成制度/花づな列島復興のためのメモ(304)
⇒2014年2月17日 (月):「徴介護制」はあり得るか?/花づな列島復興のためのメモ(308)

80歳頃の認知症出現率はおよそ20%であるとされる。
そうすると、夫婦共に80歳の場合に夫婦のどちらかが認知症である確率は、0.2×2=0.4、約 40%となる。
夫婦ともに認知症である確率は、0.2×0.2×2=0.08、約8%である。
80歳以上の夫婦11組のうちの1組が、認認介護ということになる。

認知症の人が認知症の人を介護する、 いわゆる「認認介護」となる。
大阪市で「太郎」という仮名で保護されている人の例について書いた。
⇒2014年4月21日 (月):行方不明の認知症高齢者/ケアの諸問題(5)
幸いにして「太郎さん」の身許は分かったらしいが、家族が認知症の場合、行方不明の届け出もないことがあり得る。
行方不明などの照会がないと身許が分からないことがあるだろう。
結果として、緊急一時保護されるケースが増えると予想される。

 Ws000000 道に迷った高齢者などを見つけた警察は法令上、原則24時間を超えて保護できず、介護の対応もできない。それを超える場合は、自治体が本人の健康と安全を守るため施設に預けるなどの対応を取っている。「徘徊(はいかい)高齢者緊急一時保護」などと呼ばれるが、法律に明確な定めはなく、各自治体がそれぞれの手法で対応している。事前に提携した介護施設に最大1〜2週間の預かりを頼むケースが多く、病院や一時宿泊所を使う場合もある。
緊急一時保護

緊急一時保護の対象となった人は、2008年度以降で少なくとも546人いた(毎日新聞調査)。
年間の対象人数はこの間にほぼ倍増していたという。
要介護者は増える一方であるが、介護者はなかなか増えないので、緊急一時保護の対象者が増えて行くのは必然であろう。

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