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2014年4月10日 (木)

小保方氏の研究不正認定は冤罪か?/知的生産の方法(86)

9日午後、STAP論文について、研究不正を認定された小保方晴子氏が記者会見した。
理化学研究所の調査委が、ネイチャー掲載論文に不正があったと、「改ざん」や「捏造」という強い言葉で認定したことに対して、不服申し立てをしたことの説明である。
⇒2014年4月 1日 (火):STAP論文の不正を理研が認定/知的生産の方法(84)
Ws000002
東京新聞4月10日

調査委の結論の要旨は、以下のようであった。
Ws000001
http://mainichi.jp/select/news/20140401k0000e040205000c.html

小保方氏の見解と理研の調査委員会の見解とは両立はしない。
争点は以下のように整理されている。
Ws000003
東京新聞4月10日

私は、「疑惑」と言われているものを、次の2つに分けて考えるべきだろうとした。
 A 研究成果の真実性の問題
 B 論文などにおける表現の問題
⇒2014年3月13日 (木):STAP細胞に関する過熱報道/花づな列島復興のためのメモ(315)

上記のうち、「B」については小保方氏自身も認めており、記者会見でもなんども「自分の未熟性が原因で多くの人に迷惑をかけた」と謝罪している。
一方、「A」については、「STAP細胞は200回以上作製に成功している」と述べ、STAP細胞は存在するとして論文を撤回しない考えを改めて示した。
何やら、異端審問で、「それでも地球は動く」と言ったというガリレオ・ガリレイを連想させるようでもある。

ここで、科学に限らないが、論証の問題について考えてみよう。
一般に、論理的な主張は以下のような構造を持つ。
つまり、クリティカル思考でいわれる三角形の構造である。
Ws000003
http://www.bzcom.jp/category_1/item_93_2.html

製薬会社ノバルティスファーマが販売する降圧剤ディオバン(一般名・バルサルタン)については、臨床研究データに人為的な操作がなされていたということである。
データ「改ざん」の典型例であろう。
⇒2013年7月12日 (金):治験とクリティカル思考/知的生産の方法(69)

この構造でいえば、小保方氏の主張は、「結論」は間違っていないが、「根拠」の部分に不手際・不適切があったことは認める、ということであろう。
理研調査委は、その不手際・不適切を研究不正と認定したのであり、「結論」自体は調査委のミッション外として、触れなかった。
したがって、小保方氏と理研は、「研究不正」の当否を争う構図となっている。

そのポイントは、どうやら「悪意」の有無ということのようである。
理研の規定によると、「悪意のない間違い」は不正に含まないとされており、小保方氏はこれを根拠に、不正ではないとの主張を申立書で展開した。
一方、調査委は、STAP細胞がさまざまな細胞に分化する万能性を持つことを示す重要な画像が、小保方氏の博士論文に関連する別の実験画像から流用された点について「条件が違う画像を使うこと自体、単純な間違いとは理解しがたい」と悪意を認定、捏造(ねつぞう)と断じた。

悪意」について、Wikipediaは以下のように説明している。

法律用語としての悪意は、ある事実について知っていることをいう。これに対して、ある事実について知らないことは善意という。この用法における善意・悪意は道徳的価値判断とは無関係である。例外的に、770条第1項、814条が離婚、離縁の原因として規定する「悪意の遺棄」の「悪意」は、他人を害する意思の意味であるとされる。また、疑っていることを「悪意」とし、信じていることを「善意」とする場合もある。

いささか曖昧な概念であり、個人の認識の問題と考えれば、その立証は一般的に難しいであろう。
という点からすれば、理研調査委は慎重に結論を出すべきだったように思う。
実際に、小保方氏は、錯誤(不手際・不適切)があったとしてもそれは勘違いすなわち過失であって、故意にやったわけではない、と主張している。
一方、調査委は、単純な間違いとは考えられず、悪意を推認したということであるが、悪意の有無であれば水掛け論になる可能性がある。
科学的主張に関しては、小保方氏に挙証責任があるだろうが、研究不正で懲戒を受けるということになると、懲戒する側に挙証責任が生ずるのではないか。

共同研究者と言われる人たちの考えはどうか?
Ws000000
http://mainichi.jp/shimen/news/20140410ddm002040173000c.html

「結論」の検証を除外した理研の立場は、論証の根拠が曖昧なものに科学的な価値はない、ということであろう。
それは尤もだとは思うが、再生医療に期待する立場からすれば、何よりも「結論」ということになる。
世の中には、メカニズムが明らかになっていないが、現象として有効な治療薬(法)があるのは事実である。

現在は、理研が研究不正の認定について再調査するかどうかが問題である。
再調査しないということは、これだけ社会的騒動になっている以上難しいのではないか?
しかし、再調査するとしても、調査委のミッションやメンバーについて、両者がすんなりと納得するであろうか?
いずれにせよ、両者(特に理研)は大きなダメージを受けることが避けられまい。
しかし、そのことによって、科学技術に対する予算を削減するなどがあってはさらにマイナスであろう。

なお、「悪意」の有無について、次のような意見もある。

 愛知淑徳大の山崎茂明教授(研究発表倫理)は「科学の不正を監視する米研究公正局は、誠実な誤りでないものを不正と定義しており、悪意の有無は問題にしていない。悪意がない間違いだから不正ではないという小保方氏の主張は、国際的には全く通用しない」と話している。
http://sankei.jp.msn.com/science/news/140408/scn14040822020001-n1.htm

しかし、誠実であるか否かというのも、悪意の有無と同じくらい立証することが難しいのではないか?
私たちが知りたいのは、STAP現象が再現性があるのかどうかということである。
識者は、税金を使ってその検証をするのはムダともいうが、私はそこに注力していただきたいと考える。
笹井氏、丹羽氏は、STAP現象は存在するという見解は撤回していないように理解できるのではなかろうか。

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初めまして、ローリングウエストと申します。新潟県柏崎生れ川崎市在住の56歳・中年オヤジ(山好き・旅好き・歴史好き)でございます。最新の時事問題や歴史への探究心が深そうな方だなと感心いたしました。寺社・古代旧跡・古代史ミステリー好きなマニアックなオヤジですが今は行田古墳と秩父の記事を公開しております。また覗かせてもらいますので今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: ローリングウエスト | 2014年4月11日 (金) 21時50分

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