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2014年4月25日 (金)

東アジア情勢と非超大国のアメリカ/世界史の動向(12)

オバマ米大統領が、23日に2泊3日のスケジュールで訪日した。
今回の訪日は、日本だけではなく、韓国、マレーシア、フィリピンの4カ国を歴訪する中の一環ではあるが、その最初の訪問国である。
オバマ政権の「アジア軸足」外交が問われるアジア訪問である。

今回は、国賓としての来日であり、24日には、皇居で歓迎行事に出席して天皇・皇后両陛下と会見し、宮中晩餐会に出席した。
来日する外国賓客の区分は「国賓」「公賓」「公式実務訪問賓客」「実務訪問賓客」「外務省賓客」の順番で、それぞれ待遇が決まっており、国内の滞在経費は日本側が負担する。
平成21年に来日した際には、国賓ではなく、実務訪問賓客の待遇だった。
安倍政権の期待の反映であろう。

24日には、安倍首相と会談し、アジアの安定に日米同盟が果たす役割の重要性を確認した。
「アジア軸足」において、クリミア危機が勃発して状況が変化している。
ロシアがクリミアの併合に成功しつつあるが、海洋進出の野望を隠さないでアジア諸国との領土問題を抱える中国にとっては、好都合の例であろう。

オバマ大統領は尖閣諸島(中国名:釣魚島)が日米安全保障条約の適用対象であることを明言、日本が進める集団的自衛権の行使容認の動きを支持するなど、安倍政権の望む形の会談となった。
しかし、尖閣で日中が衝突するような事態になった場合、米軍が乗り出してくることを約束したわけではない。
安保条約上、米軍の行動はあくまで米政府の判断になる。

実際に、安倍首相に対し、「事態がエスカレートするのは望ましくない。日中は信頼関係を醸成すべきだ」と緊張緩和の取り組みを求めたという。
安倍首相の言動が東アジアの緊張を高めているのではないか、という見方は多い。
防衛研究所が発行する「東アジア戦略概観」の今年度版を、高野孟氏は次のように解説している。

「北東アジア情勢の先鋭化・深刻化の背景となる4つ目の要因として、主要国間におけるいわゆるセキュリティジレンマの顕在化も指摘されている。すなわち、自国の安全を高めようと意図した国防力の増強や対外的な安全保障関係の強化が、他国にとっては脅威や懸念と見なされ、対抗的な政策を引き起こし、結果的に軍事的緊張関係が高まり、全体としての安全保障環境が悪化する状況を招いているとする見方である。こうした状況を打開するには、首脳レベルにおける戦略対話、広範な分野における国際交流、危機管理メカニズムの構築や防衛交流・安全保障協力などを包括的かつ着実に積み重ねる必要があろう」
緊張を高めているのは北朝鮮や中国だという露骨な言い方をしてもよさそうなものだが、敢えてそうせずに、「主要国間」でお互いに疑心暗鬼になって軍拡がエスカレートしていると、客観的に突っぱねたような見方をした上で、これを打開するには首脳対話、国際交流、危機管理メカニズム構築や防衛交流・協力を総合的に進めるべきだと指摘している。この「主要国」に日本も含まれていると受け止めるのが自然な読み方で、そこを捉えて5日付の東京新聞は「防衛研究所、首相の安保政策懸念」との見出しを立てて「安倍晋三首相が中国や北朝鮮の脅威を強調し、軍事力強化を図ることは軍拡競争を招き北東アジア情勢の悪化につながっていると指摘した」と書いた。この報道だけを読むと、防衛省付属のシンクタンクが本当に安倍を名指しで批判したのかとビックリするが、実際は上の引用を見れば分かるとおり、そんなストレートな表現はない。その意味では東京新聞はちょっとやり過ぎだろう。とはいえ、安倍が中国との首脳対話も開けないような状況を作り出しながら南西諸島防衛強化や集団的自衛権解禁による日米同盟強化など軍事手段ばかりを追求している異常さに、同研究所が懸念を抱いているのはたぶん事実で、上記引用の「首脳レベル…」以下の記述は安倍政権への提言と読んで読めないことはない。
高野孟:防衛研究所「戦略概観」が安倍を批判?!

問題の東京新聞の記事における図解は次のようである。
Photo_2

米国にとって中国は利害を共有する相手でもある。
オバマ大統領は、「領有権の決定的な立場は示さない」と語り、日中の領土問題には踏み込まない米政府の方針をあらためて示した。
また、尖閣諸島をめぐって日中で武力衝突が起きた場合に、米国が軍事介入に踏み切る一線はどこかと記者から問われ、「レッドラインは引かれていない」とも語った。
ある意味で、日中双方にハーフハーフといったところであろうか?

オバマ大統領にとっては、東シナ海で日本、南シナ海でフィリピンなどと対立する中国と、ウクライナ南部のクリミア編入に踏み切ったロシアの姿がオーバーラップしているのではなかろうか。
「力を背景とした現状変更に反対する」と安倍首相とオバマ大統領は共通認識を示したが・・・・・・。
Photo_3
東京新聞4月25日

 

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