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2014年3月13日 (木)

STAP細胞に関する過熱報道/花づな列島復興のためのメモ(315)

理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーなどによる新型万能細胞「STAP細胞」の研究についての疑惑報道が過熱している。
1月に発表した時の報道の芸能人に対するような過熱ぶりと、同様といえる。
まあ、方向性は逆ではあるのだが。

私は、最初の報道の時点では、「そんなことがあり得るのか?」と思った。
ネイチャー誌に投稿した際の「過去何百年の生物細胞学の歴史を愚弄していると酷評され、掲載を却下された」という小保方さんの談話を読んで、ネイチャーのレフェリーのような専門家でさえ(だからこそ?)そうなのか、と思った。
⇒2014年1月30日 (木):新しい人工万能細胞/知的生産の方法(79)

しかし、それがイノベーションというものだろうと思う。
インパクトのある研究は、往々にして「想定外」の事態から生まれる。
だから、意図的にイノベーションの重点分野を設定することには限界があるのではないかとも考えた。
⇒2014年2月 1日 (土):官製成長戦略でイノベーションは起きるか/アベノミクスの危うさ(26)

現在見聞している疑惑は、次の2つのことが混在しているように思われる。
1.研究成果の真実性の問題
2.論文などにおける表現の問題

1.は根本に関わる問題である。
あらゆる科学は仮説であり、事実による検証を繰り返して、より確からしい仮説に進化していく。
STAP細胞の場合は、第三者が再現できるか否かがカギである。
「現時点では」まだ、再現に成功した例はないということである。
しかし、これは1例でも再現すれば、疑惑は否定される性格のものである。
もう少し時間を置かないことには判断のしようがないだろう。

2.については、次のように報道されている。

 博士論文の文章流用疑惑は、約100ページある論文のうち、研究背景を説明する冒頭約20ページの文章が米国立衛生研究所(NIH)のホームページ上にある幹細胞の基礎知識の解説文とほぼ同じだった。該当部分に引用の記載はなかった。
 一方、理研は、英科学誌の調査の中間報告を14日に公表するが、不正の有無についての核心部分は先送りされる見込みだ。
 この論文では別の実験結果を示す胎盤の画像2枚が酷似することなどが指摘されてきたが、10日になって、研究の根幹に関わる画像4枚が小保方氏の博士論文の画像に酷似することが新たに判明。理研はこれを「重大に受け止める」として、論文撤回の検討に入った。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140312/wlf14031222070028-n1.htm

上掲記事によれば、論点は2つある。
A.博士論文の文章流用疑惑
B.ネイチャー論文の画像の妥当性

A.については、余り大騒ぎしない方が良いのではないか?
博士論文の中の研究背景を説明する部分ということであれば、そのことについてのオリジナリティを問題にするような性格ではないだろうと思う。
研究の経緯と現状を的確に整理することが眼目であり、権威ある機関のものを引用するのは、出典さえ明示すれば良かっただけのことのように思える。
まあ、マナー違反ではあろうが。

B.は、より深刻である。
論拠に関わるものだからである。
画像の管理はどうしていたのか?
共同研究者が当然気がつくはずだろうと思えるが、スルーしてしまっているのは何故か?
単なる過失か、何らかの意図があるのか?

 胎盤の画像について共著者は当初、「小保方氏の単純ミス」とみていた。だが、博士論文と同じ画像が掲載されていた場合、単純ミスとは考えにくくなる。
 しかし、この重要問題は中間報告には間に合わず、今後の追加調査の対象になる見込み。論文は2月以降、外部からの指摘で疑問点が続出しており、対応が後手に回っている形だ。
 理研はこれまで、STAP細胞を作製した研究成果そのものは「揺るぎない」としてきた。だが博士論文と同じ画像が掲載されていた疑いが明らかになると、「成果は事実とプロセス(過程)が大事。プロセスに疑念が指摘された」とトーンダウン。成果の信頼性も揺らぎつつあることを事実上、認めた。
 理研は2月18日に調査委員会を設置。委員長ら理研側2人、弁護士を含む外部有識者3人の計5人で構成され、小保方氏らへの聞き取りや実験ノートの確認などを行っている。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140312/wlf14031222070028-n1.htm

理化学研究所は、かつて「科学者の楽園」と呼ばれ、わが国の科学技術を支えてきた研究所である。
宮田親平『「科学者の楽園」をつくった男―大河内正敏と理化学研究所』日経ビジネス人文庫(2001年5月)が詳しく 栄光の軌跡を記している。
その伝統は今でも残っており、特定国立研究開発法人とされる可能性が大きい。

政府は、12日の総合科学技術会議で、世界最高水準の研究開発を担う「特定国立研究開発法人」について、理化学研究所と産業技術総合研究所を候補とする方針を決めた。
「特定国立研究開発法人(仮称)」は、独立行政法人改革の一環として新たに創設される制度で、優れた研究者に対し、高い給与を支払うことなどを可能にするもの。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00264646.html

私は学生時代、工学部の化学系の学科で学んだ。
といっても、その後の人生に役立てたとはとても言えないはぐれ鴉なのであるが・・・
私の学んだ学科は、喜多源逸という理化学研究所にも縁の深い化学者が創設したもので、石油化学の児玉信次郎らに引き継がれ、福井謙一のノーベル賞受賞に結びついた。
喜多源逸は、高分子化学の桜田一郎なども育て、ノーベル賞受賞者の野依良治現理化学研究所理事長もその流れの中にある。

私が学生時代に学んだことを要約すれば、「基礎の重視」と「実験ノートの書き方」ということになろうか。
「基礎の重視」は福井謙一の業績をみれば明らかである。
私の学生時代にも、「基礎をやりたい」と言って理学部から転入してきた人がいた。

化学系だから、実験は必須であった。
実験を記録するノートは、よく会社の経理の元帳などに使われるような厚手の表紙のノートを指定された。
鉛筆などの書き直しのできる筆記具の使用は禁止である。
要するに、一期一会の精神で臨め、ということであろう。

ということからすれば、今回の画像データの扱い方は大きな疑問である。
画像のID管理はどう行われていたのか?
私の学生時代とは異なり、実験の記録などにもパソコンは欠かせないだろう。
しかし、便利さは安易さに流れがちである。
理化学研究所の名誉にかけて、経緯を明らかにして頂きたい。

私は、現時点でも、STAP細胞が生成されたのは事実である思う(思いたい)。
私の青春期には、日本の立国は科学技術によるというムードがあったように思う。
金融資本主義が優位になって、理工系出身者が銀行や証券などに就職する時代があった。
しかし、資源小国性が解消されていない以上、科学技術立国の基本は不変であろう。
過熱報道で、有為な研究者の道を閉ざしたり、理系を敬遠するような流れになる愚は避けたいと願う。

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コメント

日本分子生物学会の声明をご覧になられましたか?この件はほぼ捏造だと思って差し支えないと思います。根拠などは”慶應大学 吉村研究室 - T細胞はSTAP幹細胞になれない”および、そのリンクなどをご覧ください(サイト本体はアクセスが集中しているせいか、見れませんが、googleのキャッシュで見ることができます。)
この一か月ほどこの問題を注視してきましたが、2月の半ばの時点で疑惑はすでに深まっていました。また、3月5日の詳細手順発表は、事情を知る者には逆に疑惑を深める結果になりました。(この件も上記の吉村研究室サイトでよくわかります。)ですので、その翌朝の「小保方氏による実験成功」の報を聞いたときは、理研はどういうつもりなのか、理解に苦しみました。そして今回の写真疑惑は「原爆級」といってよいでしょう。若山照彦先生の呼びかけ以前に、すでにツイッターなどでは、堰を切ったようにstapへの疑惑表明があふれていました。とくに、早くからstapの再現実験に取り組んでおられた、関西学院大学の関先生のツイートは痛々しいくらいです。
 私の目から見ると、一般メディアの反応は遅く、浅く、そして過少だと思います。過熱の正反対です。
 もっとも、「遺伝子操作を用いない、ケミカルな操作のみでのリプログラミング」という夢が完全に否定されたわけではないと思います。でも、小保方氏はそれを達成していない可能性が極めて濃厚です。そして、今後このテーマの追及は彼女を除いた体制でされるべきだと考えます。

投稿: | 2014年3月13日 (木) 23時43分

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