クリミヤ半島の帰趨/世界史の動向(9)
ウクライナ情勢が急迫化している。
歴史的な政争の舞台として有名なクリミヤ半島で、また戦火が上がる可能性も出てきている。
緊迫するウクライナ情勢を受けて、オバマ米大統領は3日、ロシアが南部クリミア半島で軍事活動を停止しない場合、「ロシアを孤立させ、経済に打撃を与えるあらゆる経済的、外交的措置を検討する」と明言した。米政府はロシアとの交流プログラムの凍結に踏み切り、欧州連合(EU)などと連携した対露包囲網の構築を急いでいる。一方、クリミア半島のロシア黒海艦隊がウクライナ軍に対し、4日午前5時(日本時間正午)を期限として最後通告を出したという報道について、ロシア側が否定した。「期限」を過ぎても戦闘発生は伝えられておらず、情報が錯綜(さくそう)している状況だ。http://mainichi.jp/shimen/news/20140304dde001030061000c.html
幅5-8kmのペレコープ地峡によって大陸とつながっている。
よく「半島の地政学」などというが、まさにロシアとヨーロッパの軋轢が土地に刻み込まれているような半島である。
オスマン帝国が露土戦争(1768年〜1774年)でロシアに敗れると共にロシアに従属し、1763年クリミヤ半島全域がロシア帝国に併合された。
特に、1853年〜1856年にかけて戦われたクリミヤ戦争は、近代史の1つの画期となる戦争であった。
クリミヤ戦争は、ナイチンゲールの名前で知られる。
クリミア戦争での負傷兵たちへの献身や統計に基づく医療衛生改革などにより、看護の世界のシンボルとなった。
この戦争によりロシアの後進性が露呈した。
産業革命を経験したイギリスとフランス、産業革命を経験していないロシアの国力の差である。
建艦技術、武器弾薬、輸送手段のどれをとっても、ロシアはイギリスとフランスよりもはるかに遅れをとっていた。
オーストリアも国際的地位を失い、サルデーニャや、戦中に工業化を推進させたプロイセン影響力を持つようになった。
第二次世界大戦では、ソ連の祖国防衛戦争の激戦の舞台となった。
1944年、リスターリン政権により、クリミア半島はロシア・ソビエト連邦社会主義共和国の一部として統治された。
1955年、祖国防衛戦争勝利の10周年を機に、ウクライナ融和策の一環としてウクライナ・ソビエト社会主義共和国に移管され、1991年のソ連崩壊後、独立したウクライナの一部となった。
1992年5月5日、クリミア半島は独立を宣言したが、のちにウクライナ内の自治区となることで同意、クリミヤ自治共和国が成立した。
第二次世界大戦末期、ヤルタ近郊でアメリカ、イギリス、ソビエト連邦による首脳会談が行われた。
ソ連対日参戦、国際連合の設立について協議されたほか、ドイツおよび中部・東部ヨーロッパにおける米ソの利害を調整することで大戦後の国際秩序を規定し、東西冷戦の端緒ともなった。
まさに世界史の動向に大きな影響を与えてきた半島である。
報道を見る限り、ロシア支持は圧倒的に少ないようだ。
北方領土問題との兼ね合いで、日本はどのような対応をするのであろうか。
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