認知症患者の増大と在宅ケア/ケアの諸問題(2)
2025年に団塊の世代が後期高齢者になる。
要介護率は、後期高齢者になるとグンと増える。
介護における2025年ショックと呼ばれている。
⇒2014年2月 6日 (木):揺れる介護福祉士養成制度/花づな列島復興のためのメモ(304)
⇒2014年2月17日 (月):「徴介護制」はあり得るか?/花づな列島復興のためのメモ(308)
介護は現在の先端的な課題であるが、その職業が3K(キツイ、キタナイ、キケン)とか、さらには「給料が安い、休暇が少ない、カッコ悪い」を加えて、6Kが世間に定着してしまっている。
「給料」は、需給バランスで決まる要素もあるので、今後のことは分からないが、私の知る限りでは「安い」と言わざるを得ないような状態である。
そのため、介護福祉士を養成するための専門学校等(介護福祉士養成校と言われる)は、応募者が少なく定員充足に苦労しているところが多いようだ。
中には、志を持った素晴らしい若者もいるが、例外のようである。
認知症患者はどれくらいいるのだろうか?
厚生労働省研究班の推計によれば、2012年時点の認知症高齢者は、軽度者を含め約462万人だということである。
予備軍とされる「軽度認知障害」(MCI)の約400万人を加えれば、65歳以上の1/4が該当する。
もはや誰でも罹患する可能性があるといえよう。
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/140125/ecb1401251158001-n1.htm
国の方針は、高齢者を介護施設で支えるのではなく、在宅介護を普及させ、自宅で暮らしてもらうということである。
しかし、
在宅介護にも大きな問題がある。
第一は、「独居老人の認知症」の問題である。
誰でも、自分は認知症ではない、と思いたいだろう。
「独居老人」の場合、挙動に認知症の症状が現れても、誰にも気づかれないということがある。
自分で認知症と診断するのは、矛盾というものであろう。
第二に、見張りの限界の問題である。
認知症患者が起こした鉄道事故の判決が波紋を呼んだ。
2007年の12月。愛知県内に住む当時91歳だった認知症の男性が、自宅から一人で外に出て、およそ一時間後に、3キロほど離れたJRの駅の線路内で列車にはねられて亡くなりました。この事故で列車に遅れなどが出たことから、JR東海が、振り替え輸送の費用などの損害賠償として、およそ720万円の支払いを遺族に求めて提訴。今年8月の名古屋地裁の判決では、遺族のうち、同居していた男性の妻と、横浜に住む長男の2人に賠償責任を認め、JRが求める全額を支払うよう命じました。
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/172073.html
この判決は、認知症の人を見守る注意義務を家族に厳しく求めている。
しかし、判決が求めるような責任を果たすためには、部屋に鍵をかけて閉じ込めておくようなことになりかねない。
それがあるべき介護のあり方なのか?
さらに、介護に深くかかわるほど重い責任を問われている。
長男は、親の介護のために妻を実家近くに住まわせ、自分も月3回ほど実家を訪れていたという。
その長男の責任を認め、介護とのかかわりが少ない他の兄弟は責任を問われなかったが、これでは積極的に親の面倒を看ようという子供がいなくなる恐れもある。
認知症が増えていくのは間違いないだろうが、在宅ケアに固執すると問題は解決しないと思われる。
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