袴田事件再審開始決定と司法制度/花づな列島復興のためのメモ(318)
いわゆる袴田事件について、静岡地裁は27日、再審開始と死刑、拘置の執行停止を決定した。
1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で強盗殺人放火事件が発生し、その裁判で袴田巌被告の死刑が確定していた。
法務省によると、死刑囚の拘置停止決定と再審による無罪判決前の釈放は初めてだというが、死刑囚の無罪が確定した冤罪事件がないわけではない。
静岡新聞3月27日夕刊
再審開始決定の骨子は以下の通りである。
・再審を開始し、死刑と拘置の執行を停止する
・犯行着衣とされた5点の衣類には、袴田元被告や被害者以外の血液が付着している可能性が認められる
・衣類に関する証拠は無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する
・衣類以外の証拠も検討したが、犯人性を推認させる力が弱い
・袴田元被告は捜査機関が捏造(ねつぞう)した疑いのある重要な証拠で有罪とされた
・これ以上の拘置は耐え難いほど正義に反する
http://mainichi.jp/shimen/news/20140328ddm001040213000c.html
この決定を受け、静岡地検は東京拘置所の袴田元被告を逮捕から47年7カ月ぶりに釈放したが、再審開始決定の取り消しを求めて即時抗告する方針で、再審の可否は東京高裁で再び審理される見通しである。
陰惨な事件は確かに存在した。
である以上、犯行を行った人間がいることは間違いない。
もし、犯人が別にいるとすれば、その人間はどこで、どうしているのか?
事件発生から1年2カ月後に工場のみそタンクから見つかった血痕の付いた衣類5点は、確定判決において袴田被告を犯人と認定する上で最も重視した証拠だった。
その衣類が、今回「後日捏造された疑いがある」とされたのだ。
ズボンは太ももが入らない。
捜査当局はこれを「味噌によってズボンが縮んだから」と強弁した
「B」という表示があったのを「肥満用」だと主張したが、「B」は色のことだった。
どう見ても、死刑を確定させるような証拠にはなり得ない。
どうして、検察は頑張ってしまったのだろう。
どうして、裁判官は死刑の判断をしたのだろう。
検察・警察などの捜査機関は、証拠を捏造したのか?
足利事件、厚労省の不正郵便事件等の記憶がある現在、十分にあり得ることだと考えられる。
⇒2009年6月 6日 (土):冤罪と裁判員制度
⇒2009年6月10日 (水):刑事責任能力の判断と裁判員裁判
⇒2012年4月 8日 (日):厚労省不正郵便事件の不可解な着地点/花づな列島復興のためのメモ(49)
裁判所が「これ以上の拘置は耐え難いほど正義に反する」とまで言っていることに対し、即時抗告が妥当と言えるのだろうか。
しかも、一審の静岡地裁で死刑の判決文を書いた元裁判官・熊本典道氏は、裁判長を見据えて受け答えする袴田の様子や、任意性に乏しい供述調書などを通じ、「有罪認定は難しい」と思っていたのに、結審後に判決文を検討する中で、裁判長ともう一人の陪席判事が有罪と判断、結果的に先輩判事に押し切られたと語っている。
この半年後、熊本は耐えられず退官し、弁護士に転じて再審請求を支援する。
合議の秘密を破り、第1次再審請求中の2007年、「無罪の心証があった」と告白したが、請求棄却が確定した。
私の心証としては限りなくシロではあるが、ここでは内容に立ち入ることはしない。
ただ、再審開始決定文の中にある「捜査機関が捏造した疑いのある重要な証拠で有罪」「これ以上の拘置は耐え難いほど正義に反する」という言葉は重い。
もちろん、真実は藪の中ではある。
しかし、「捜査機関が捏造した疑いのある重要な証拠で有罪」にすることは断じてあってはならない。
もし、検察がメンツのために抗告するとしたら、国民の信頼をますます失うことになる。
まず、抗告するに足る判断の根拠を示すことが必要ではないか。
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