脳の回路形成の可視化/進化・発達の謎(2)
人間の赤ちゃんと成人との差は、他の動物に比べると格段に大きい。
たとえば、馬の赤ちゃんは、生まれて直ぐに四足で立ち上がる。
しかし、人間の赤ちゃんは、二足で立ち上がるのに早くても1年位を要する。
やがて言葉を覚え、好奇心が芽生えてからは、驚くほどの勢いで多くのことを学習していく。
自分の子育ての時は、余裕もなく必死だったが、孫の場合は観察する余裕もあって、つぶさに発達の様子を眺めることができる。
それを記録した島泰三『孫の力―誰もしたことのない観察の記録』中公新書(2010年1月)という著書があるが、確かに孫の成長を眺めることは、高齢者にとって大きな楽しみといえよう。
ところで、人間の頭の中の情報処理は次のように説明されている。
情報処理の最小単位は神経細胞(ニューロン)で、1つの神経細胞から長い「軸索」と、複雑に枝分かれしている「樹状突起」と呼ばれる突起が出ている。
これらの突起が別の神経細胞とつながり合い、複雑な神経回路網(ネットワーク)を形成している。
1個の神経細胞はそれぞれ1万個もの神経細胞と連絡を取り合っている。
神経細胞内では、電気の流れが情報を伝える。
紙経細胞と神経細胞の接合部分はシナプスと呼ばれるわずかな隙間があり、この部分では神経伝達物質が次の神経細胞に情報を伝達する。
http://www.nissui.co.jp/academy/eating/07/02.html
この脳内神経回路網は、どのようにして形成されるのであろうか?
3月28日の静岡新聞に、三島市にある国立遺伝学研究所(遺伝研)の興味深い研究が紹介されていた。
ここでは、科学ニュースのサイトから引用する。
国立遺伝学研究所(遺伝研)は3月27日、生まれて間もないマウスの大脳皮質の神経回路を可視化する方法を開発し、生きたまま脳の深部までとらえることの可能な改良型の二光子顕微鏡の観察技術と組み合わせることで、新生児大脳皮質の神経回路が成長する様子を直接観察することに成功したと発表した。
同成果は、同研究所の水野秀信氏、羅ブンジュウ氏、佐藤拓也氏、岩里琢治氏、理化学研究所脳科学総合研究センターの斎藤芳和氏、糸原重美氏、生理学研究所の足澤悦子氏、吉村由美子氏らによるもの。詳細は3月27日付(米国時間)で米国科学誌「Neuron」オンライン版に先行掲載された。ヒトの脳表面の大部分を占める大脳皮質は、哺乳類に特有の脳構造であり、そこにある神経回路により、知覚や運動、思考、記憶などの高度な情報処理が行われていることが知られている。しかし、この回路は生まれた時は未熟でおおまかにしかできておらず、さまざまな刺激により、成長することが分かっていたものの、そのプロセスやメカニズムについては、良く分かっていなかった。
研究グループでは、今回開発した技術を用いて新生児マウスの大脳皮質を調べたところ、神経細胞は突起を激しく伸び縮みさせながら、結合すべき正しい相手に向かって突起を広げていくことを突き止めたという。また、遺伝子操作によって情報をうまく受け取れなくした神経細胞では、突起の伸び縮みの程度が異常に大きくなり、正しい相手の有無と関係なくランダムに突起が広がることも確認したという。
http://news.mynavi.jp/news/2014/03/28/211/
私の孫は今年小学校に入学する。
この1年、つまり幼稚園の年長の間に、ずいぶんニューロンのネットワークが高密度化したように思える。
たとえば、運動会で万国旗を作ったことから、国旗に興味を持ち、ソチ・オリンピックで各国の国旗が掲揚されるのをTVでみて増幅されたようである。
私の子供たちがかって遊んだことのある国旗ゲームという遊び(裏返してある2枚の国旗をトランプの神経衰弱の要領であてる)に、飽くことなく挑戦する。
http://www.yukawanet.com/archives/3733622.htm
祖父母が相手であるが、孫の圧勝である。
短期記憶においては、到底6歳児に敵わないのだ。
小さい頭の中で、どのような現象が起きているのかと考えると不思議である。
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