石原慎太郎の耄碌/人間の理解(3)
石原慎太郎といえば、若くして『太陽の季節』で芥川賞を受賞し、話題作・問題作も多い作家である。
同時に、保守政治家としての履歴もすでに長い。
現在は、橋下徹氏と共に、日本維新の会の共同代表を務めている。
日本維新の会は、決して零細政党ではない。
一昨年末の第46回総選挙において172名の公認候補を立て、54議席(うち小選挙区14議席、比例区40議席)を獲得、衆議院での第3党となった大政党である。
その共同代表を務める石原氏が、耄碌したとしか思えない挙動を見せている。
党が、原子力協定に反対を決めたことについて、多数決で反対を決めたのは高校の生徒会のやり方であり、本当にばかばかしく恥ずかしい、と言ったのである。
政党が、多数決で決めた政策を、代表者が反対するとはどういうことか?
民間企業で言えば、取締役会の多数決議を社長の独断でそれとは異なる勝手な行動をとるようなものである。
特別背任に相当しよう。
そもそも国権の最高機関である国会が多数決で決めることにも、高校の生徒会のやり方であり、本当にばかばかしく恥ずかしい、と否定するのであろうか?
「(原子力協定の)採決の時に私は賛成しますよ、賛成したらどうする」とも発言した。
さすがに若手議員から、間髪をいれず「出て行け!」と声が出た。
当たり前である。
もはや石原氏の頭のなかから政党や民主主義という概念が抜け落ちているのだろう。
それは全体への気配りや状況把握の力が欠如しているということでもある。
どうしようもない耄碌ぶりである。
耄碌とは何か?
【耄】は日本語では「老いぼれる」ことを言う。【耄】という字は「老」の下に「毛」という字を書く。
この場合の「毛」は「細い・衰えた」の意味である。
【碌】は「碌すっぽ」の碌。
「碌ずっぽ 」とは、下に打消しの言葉を伴って、物事を満足に成し遂げないことを表す言葉。
Yahoo! JAPAN知恵袋【老人性痴呆】より
…65歳以上に発症する脳萎縮に基づく痴呆を主徴とする老年精神病をいい,医学的には老年痴呆という。65歳未満に発症する初老期痴呆の一つであるアルツハイマー病と病理学的には差がない。最近は,したがってアルツハイマー型老年痴呆senile dementia of the Alzheimer typeと呼ばれる。症状の中心は痴呆であるが,初発の症状としては,(1)記銘力障害(最近の出来事を覚えられない),(2)失見当識(時間や場所の見当がつかない)の二つに加え,(3)判断や計算などが極端に悪くなる。…
世界大百科事典内のもうろく(耄碌)の言及
人間は、高齢化するに従い、認知能力が弱まるのは避けられない。
病的になれば、認知症ということになる。
石原氏は、すでに認知症のレベルに至っているように見える。
現状は、自己中心が高じて、すでに極論の域を超えている。
私は、異端を排除しろという意見には反対である。
しかし、正常な認識ができなくなったら、少なくとも表舞台からは退場すべきだと考える。
過去の名声に捉われて、誰も率直に言わないのではないか?
失言大魔王の森元総理が、石原氏を評して、「あの方、我が儘な方ですから」と言ったという。
この限りでは、的確な評言である。
石原氏も、日本維新の会も、賞味期限切れということだろう。
こんなことでは、ますます自民党が、我儘をし放題、やりたい放題になってしまうだろう。
国会も健全なバランスを保って欲しいものだ。
石原氏には、『老いてこそ人生』幻冬舎文庫(2003年7月)という著書がある。
信長が桶狭間の一戦を前にして舞ったという「敦盛」とハップル望遠鏡について触れつつ、以下のように書いている。
六十五億光年という距離や時間と対比しての私たちの人生のせいぜい八十年という年月の意味合いは、塵のようなもの、在るのだか無いのだかわからぬくらいのもの、つまり、夢、幻のようなものだという実感をますます与えてはくれます。
そしてその実感を踏まえて生きていくことにこそ人間は、他の動物は備えぬものごとへの認識を持ち、その上にさまざまな意識や精神や情念を持った私たち人間の人生の意味と価値があるに違いありません。
私も「老いてこそ人生」という言葉に同感を覚える。
しかし、自らの「意識や精神や情念」が醜態をさらしていることを自覚していないとしたら、そうとばかりは言えない。
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