言語の分節化機能と文化/知的生産の方法(83)
ヒトと他の動物を区分けするメルクマール(指標)の1つが、言語の使用であると言われる。
もちろん、サルやイルカなどにも原初的な言語はあるという説を聞くが、そこには明らかに質的な相違があるはずである。
人間は、五感を通じて得た外界に関する認識を、言葉を用いて概念化する。
そして、概念化することによって、現実とは相対的に独立的な思考の世界を展開することが可能になる。
例えば「虹の色」について考えてみよう。
虹は、大気中に浮遊する水滴(特に雨滴)により、太陽光線が反射屈折して生じることは古くから知られていた。虹は、「赤」「橙」「黄」「緑」「青」「藍」「紫」という7色というのが、日本人の常識である。
しかし、光は連続した波長から構成されているのであって、7つのスペクトルに明確に離散しているわけではない。
すなわち、波長は本来アナログであってデジタルではない。
われわれが虹の色を7色に分解するのは、「赤」から「紫」に至る7つの色の言葉・語彙(ボキャブラリー)を持っているからである。
http://blog.donaldo-plan.com/archives/2502
色のスペクトルは、もっと詳細に区分することも可能である。
黄色と緑色の中間色としては、“黄緑色”がある。
“黄緑色”は実際に使用している言葉でもある。
さらに黄色と黄緑色の中間色として、“黄黄緑色”を考えることができるし、さらには“黄黄黄緑色”を考えることもできるだろう。
このように考えれば、虹は24色に36色にも、あるいは72色にも数えられる。
あるいは、これらの「色の言葉」がなければ、その色として認識することができないともいえる。
実際に欧米では、「藍」色は明確に分離されていず、虹は6色だと認識されているとも言われる。
「藍」という言葉を知らなければ、「青」と「紫」は隣接した色として認識されているであろう。
このように、モノを意味のある単位で捉えることを“分節化”といい、そこでは言葉が重要な働きをしている。
このように、世の中の連続した事象に区切りを入れ、分節化して捉えることは、言葉の存在を抜きにしては考えられない。
そして、虹のスペクトルが離散して存在しているわけではなく、それを認識する言葉に依存しているように、その分節の仕方が対象の側の性質にあるわけではないことに留意する必要がある。
虹の色の認識と同じように、ものごとを認識することと言葉(ボキャブラリー)とは密接な関連性を持っている。
例えば、日本語では「米」を炊けば「御飯」に変わるが、英語ではともにライス(rice)である。
一方、英語では同じ「肉」でも、ロース、フィレ、ランプ等々詳細に区分する。
http://www.koubegyu.net/steak/fillet.html
両者の食に対する関心の違い、言い換えれば文化の違いである。
そういう意味で言えば、分け方は文化であると言ってよい。
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