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2014年3月17日 (月)

コピー&ペーストの功罪/知的生産の方法(82)

私がリサーチャーという職業に従事していたのは、1970年代の中〜後半のことであった。
シンクタンクの定義にもよるが、一応シンクタンクと称していた組織で、官庁関係のプロジェクトが中心だった。
予算との兼ね合いで形式的な納期は3月末のものがほとんどだったが、実質的には5月いっぱいぐらいかけて最終成果物に仕上げたものが多かった。

とはいえ、3月末には仮納品という形で検収を受けた。
仮納品するためには体裁を整えることが必要である。
そこで威力を発揮したのが、NHXすなわちN(のり)とH(ハサミ)とX(ゼロックス)だった。
仲間内では、リサーチャーの3種の神器などと称していた。

しかし、これはあくまで体裁を整えるというためだけのものであることは、発注者ー受注者双方の了解事項であった。
本当の納期までには、ちゃんとした成果物に仕上げますから、という了解のもとで行われていた作業である。
であるから、3月末を過ぎてからが地獄のような追い込みの時期であった。
シュラフを持参し、事務所に段ボールを敷いて仮眠をとる、などということが常態であった。
リサーチャー35歳定年説というのが流れていたが、こんな生活では確かに35歳くらいが限度だろうと、実感した。

遡って学生時代のことを考えてみれば、ゼロックスが代名詞になっている乾式コピーは高嶺の花だった。
家庭用の複合機でコピーができ、大判のものでもコンビニに行けば何とかなる現状など、夢想もできなかった。
文献のコピーは、手書きで行っていた。
外国の単行本には、当たり前のように海賊版が出回っていた。
著作権の意識などほとんどなかったと言ってよい。

打ち合わせの資料など複数部を用意する場合は、青焼きと呼んでいた湿式コピーだった。
湿式コピーを大量に用意するのは単純な作業で、嫌がる人が多かったが、リサーチに行き詰まった時などには格好の気分転換になるので、私は好きだった。
単に、行き詰まることが他人より多かっただけなのかも知れないが。
電卓さえ、社会人になった1969年には、パーソナルな備品ではなかった。
配属された課に、文字通り「卓上型」の電子式の計算機が入った時は歓声が上がった。
その後の「性能/価格」の向上は驚くほどの速度で、名刺入れに入ったり、腕時計に電卓機能がついたりするのに時間を要しなかった。

STAP細胞が論文撤回(取り下げ)の方向であるという。
コピー&ペーストが容易に行える時代だからなあ、という感想を持った人は多いに違いない。
渦中の小保方さんも、至極簡単な気持ちで、日常的にコピー&ペーストをしていただろうと推測される。
そういう時代であり、コピペ探知サービスが企業として成り立っているらしい。

今私がやっているように、パソコンを使い、インターネットを通じて情報発信することが簡単に行える時代になった。
いわゆるWeb2.0である。
何とすばらしい時代になったものかと思う。
情報の受発信が大衆化され、モノ書きが一部のエリート・インテリの独占する時代は終わったのだ。

しかし、便利さを手に入れることは、一方で往々にして何かを失うということである。
オリジナリティが特に問われる科学の研究においては、オリジナルとコピーは峻別して管理しなければならない。
自分の書いたものでも、どれがオリジナルだったか分からなくなってしまいがちである。
私は、煩わしいほど「版の管理」を行い、引用はかならず引用と分かるようにしている(つもりである)。

博士論文とかネイチャーへの投稿というような重大な局面で、不用意なミスが起きることは信じ難いことである。
Photo
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140312/wlf14031222070028-n2.htm

共著者という人たちは、何をシェアしていたのだろうか、と思う。
万が一、不用意ということではなく、故意であったならば……
人間の心の中は他人には窺い知れないのだから、詮索するのは止めておこう。

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