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2014年3月20日 (木)

IT業界における2015年問題/花づな列島復興のためのメモ(317)

ひと昔前のことになるが、「IT革命」という言葉が流行語になったことがある。
IT=Information Technologyで、要するに情報技術である。
それに、C=communicationを加えて、ICTと言うようになっている。
⇒2009年4月13日 (月):情報革命における不易と流行
⇒2013年7月 5日 (金):ビッグデータ・ブームは本物か/知的生産の方法(66)
⇒2013年7月 7日 (日):ICTとマーケティング/知的生産の方法(67)

情報システムの企画、構築、運用などを一括して行うことを、システムインテグレーションという。
システムの企画・立案からプログラムの開発、必要なハードウェア・ソフトウェアの選定・導入、完成したシステムの保守・管理までを総合的に行う。
システムインテグレーションを行う事業者をシステムインテグレーター(SIer:System Integrator)という。

いま、SIerがうけに入っているという。
リーマンショックや東日本大震災で凍結していたプロジェクトが再始動し、幅広い業界でIT投資が増えているkらだ。
2015si
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140225/538989/?ST=print

しかし、SI業界は、私が現役の頃より、常に人材(IT技術者)の不足と過剰を繰り返してきた。
技術者の育成には時間を要する。
供給のリードタイムが長いのだ。

したがって、需要が旺盛な時期に合わせて技術者を確保すると、ピークが過ぎると仕事がないということになる。
かといって、仕事の少ない状況に合わせていると、機会損失が発生する。
その辺りの見極めがSIerの経営の要諦ということになる。

需給バランスの調整弁として機能してきたのが、多重下請け構造である。
営業力のある会社が元請けとなって受注し、1次→2次→3次→4次・・・と仕事は流れる。
一般に、下流の業務ほど細切れになり、部品の製造を担当するのはどの業界でも変わらない。
下流に行くほど単価は安くなるが、さしたる技術力も要求されないので、その限りでつじつまが合っているとも言える。

SI業界に、2015年問題というのがあるらしい。
2015年にIT受託の仕事が集中し、その後に急減すると予測されている現象である。
ある意味では、IT関連業務には恒常化している現象ともいえる。
日本のIT業界には、コンプライアンス上問題となるような事象が、事実として多いことは周知のことである。
多重下請け、法令無視、従業員の給与抑制というような慣行である。

特に、二重派遣の問題は社会的にも問題となり、法律の網を潜るため、偽装請負のような現象も生まれた。
基本的な要因は、IT技術者の需給バランスの問題であるが、2015年問題でIT技術者の不足がさらに深刻化すれば、違法な就労業態が増えることになりかねない。
また、2015年を過ぎて仕事が急減すると、多重下請けの下流に位置する中小IT企業は、仕事の確保に苦労することが予想される。

このままでは、若者は企業向け情報システムの業界を敬遠し、優秀なIT技術者は業界を見限って離脱してしまうだろう。
結果として、日本のIT業界の質の低下に繋がりかねない。
それは顧客企業にも影響する。
情報システムの質が企業の生命線になっている時代に、質の低下を余儀なくされるとしたら、成長戦略も画餅ということになるだろう。

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