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2014年2月24日 (月)

ソニーはどこへ行くのか/ブランド・企業論(19)

ソニーが2013年度第3四半期の決算説明会において、PC(VAIO)事業の切り離しを明らかにした。
VAIOには私も思い出がある。
2000年の頃だったと思う。
個人用として使っていたPCが不調で、思い切って買い換えたのがVAIOだった。

VAIOはずいぶん軽量で持ち運ぶには好適だった。
しかし、VAIOの利用は長続きしなかった。
OS(Windows)の進歩が早く、その度に買い替えるほどのブランド・ロイヤリティはなかった。
価格重視で、Dell製品や台湾メーカー製品に移行せざるを得なかったのである。

ソニーがVAIO切り離しを意思決定したのは、もちろんSONY全体の経営の問題であろう。
今年1月27日、米ムーディーズがソニーの長期信用格付けを1段階引き下げて「Ba1」としたと発表した。
これは、投資不適格ということだ。
ソニーは、前CEOのハワード・ストリンガー体制下で、テレビ事業での営業赤字が11年度(12年3月期)までの8年間で計6000億円以上に達した。
2012年4月、ストリンガー氏に代わって、平井一夫氏がCEOに就任した。
2012年度(13年3月期)決算の内容は、以下のようだった。
売上高:6兆8008億円(前期比4.7%増)
営業利益:2301億円(前期は672億の赤字)
税引き前当期純利益:2456億円(同・831億円の赤字)
純利益段階での黒字5年ぶりだった。

ところが、2月6日の2013年度第3四半期決算説明会では、再び1100億円の赤字に転落するとの見通しが示された。
当初の目論見は、通期の最終損益は300億円であった。
赤字の要因は、期初に1000億円の営業利益を見込んだエレクトロニクス(エレキ)部門の赤字継続である。
10期連続の営業赤字が見込まれるテレビ事業を、14年7月をめどに分社した上で完全子会社にすると発表した。
事業の独立性を高めて経営責任を明確化すると同時に、意思決定のスピードを引き上げ15年3月期の黒字化を目指す方針だとする。

その一環として、300億円の赤字が見込まれるパソコン事業は、投資ファンドの日本産業パートナーズへ売却すると発表した。
パソコン事業はVAIOブランドで展開してきたが、欧州での人気は高かったという。
しかし、新興国向けの低価格品など普及品をつくり始めたことで、10年度には年間870万台とピークをつけたが、量を追うことが質の問題を招いた。
VAIOブランドが持っていた先進的なイメージが崩れたのである。

パソコン事業に従事している社員はおよそ1100人。
そのうち、新会社に移ることができるのは250~300人程度で、残る800人強、特に中高年社員たちは「戦力外」通告を受ける。
つまり、「キャリアデザイン室」という戦力外とされた中高年社員を集め、社内外への求職活動を行わせるために設立された部署へ配置されるという。
事実上の追い出し部屋である。

使い捨てはヒドイと考えられるは、「キャリアデザイン室」の実態について、次のような記事もある。
会社から与えられた仕事はなく、スキルアップにつながるものであれば、何をやってもいい。
多くの社員は、市販のCD-ROMの教材を用いての英会話学習やパソコンソフトの習熟、ビジネス書を読むことなどで時間を過ごしているという。
考えようによっては、ずいぶん恵まれた環境を用意されているとも言える。
キャリアデザイン室に在籍して2年が過ぎると、子会社への異動を命じられるというが、2年間と言えば大学院の修士課程に相当する期間である。

しかし、恵まれた環境とはいっても、キャリアデザイン室からは、イノベーションを起こすような発想は出てこない。
トランジスタラジオ、トリニトロンテレビ、ウォークマン、ハンディカム、プレイステーションなどの時代を画するような製品を世に送り出してきたソニーはどうなるのだろうか?

「週刊現代」3月1日号の『あぁ、「僕らのソニー」が死んでいく』によれば、ソニー凋落の原因は以下の3点に集約されるという。
・経営陣の劣化
・米国型経営の導入
・モチベーションの低下

経営陣の変質は、出井伸之氏からで、エンジニアの発言力が低くなったという。
出井氏の後がストリンガー氏である。
出井氏が社長時代に、EVA(経済的付加価値)と独立採算性である。
グローバル企業になるために必要な施策であったといわれる。

制度自体はいかようにも評価できよう。
しかし、このような制度が、数値化されない要素を切り捨て、短期的な成果を重視することになるであろうことは容易に推測できる。
ソニーが創立以来持っていたはずの、夢を追いかけるロマン主義やイノベーティブな精神とは両立しない。
ソニーの歴史的役割は終わったということなのだろうか?

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