安倍首相は反米か?/アベノミクスの危うさ(27)
靖国参拝を強行した安倍首相の行動について、賛否両論が激しくなっている。
神社参拝は日本の伝統であり、他国からとやかく言われる筋合いはない、というのが賛成派の大よそのところだろう。
国のために命を捧げた英霊に敬意を表すのは当然だ。
しかし、靖国神社には、日本の伝統とは言えない一面がある。
建立の趣旨が、その霊を積極的に顕彰する場所、つまり単なる霊から英霊に転化する装置として機能することにあったことは無視しえないだろう。
したがって、西南戦争で政府軍と戦った西郷隆盛たちは、靖国に祀られていない。
⇒2013年12月27日 (金):慰霊と顕彰/「同じ」と「違う」(66)
戦後、大東亜戦争であり、太平洋戦争であり、第二次世界大戦でもあった戦争に敗れた日本は、東西冷戦構造の中で、西側の一員となった。
自発的な選択というよりも、国際的な力関係の中でそうせざるを得なかったのだろうが、結果として良い選択であった。
西側の体制の中で、軍事大国にならないで、ひたすら経済大国を目指してきたのであり、GDPの指標ではアメリカに次ぐ位置を占めるまでになった。
しかし、その段階で長期にわたる停滞を経験せざるを得なかった。
長期停滞を打ち破るべく政権復帰を果たした安倍首相は、アベノミクスという経済政策セットを掲げた。
アベノミクスは初動の段階では目覚ましい成果を上げたかのようだった。
安倍政権発足時の日経平均株価1万0230円、円ドルレート85円に対して、昨年12月30日大納会の平均株価の終値は1万6291円で実に約6割も上昇、円ドルは105円で2割強の円安となった。
黒田日銀総裁の言う「異次元金融緩和」によって、資金供給量が増えたことにより、大幅な円安と株高が実現したのである。
しかし、大幅な円安と株高というのは、あくまで現象論のレベルである。
武谷三段階論に倣えば、実体論、本質論のレベルではどうなのか?
⇒2013年8月11日 (日):三段階論という方法①武谷三男の科学的認識の発展論/知的生産の方法(71)
実体論を実体経済と考えれば、事態は楽観できるものではない。
⇒2014年1月 9日 (木):金融緩和で実体経済に資金は回っているか/アベノミクスの危うさ(24)
本質論とは何だろうか?
人によって考え方はさまざまであろうが、視野を経済の外側にまで広げ、人が生きるということの意味、あるいは幸福感にまで立ち戻って考えることではなかろうか?
都知事選はそういったことを問い直すチャンスであったが、まあ選挙の争点としては迂遠だったともいえよう。
アベノミクスは、そういう面からも検討されるべきであろう。
靖国参拝は、その1つの材料である。
西側の一員としての日本は、必然的に親米路線であった。
安倍首相も、祖父の岸信介が総理の座と引き換えにした日米安保条約を最重要と考え、折に触れ日米同盟が盤石であることを口にしてきた。
しかし、靖国参拝にアメリカが想定外(?)の反応を示した。
考えてみれば、アメリカの反応はごく自然なものといえよう。
先の戦争における日本のスローガンの1つは「鬼畜米英殲滅」であった。
http://blogs.yahoo.co.jp/seijitookane/2409607.html
靖国神社には、その戦争指導者も顕彰されているのである。
敢えて靖国参拝を強行した安倍政権は、実は反米であるという見方もある。
東京新聞2月8日
安倍首相の側近と言われる衛藤晟一首相補佐官が、動画サイト「ユーチューブ」に投稿した国政報告で、安倍首相の靖国神社参拝後に失望声明を発表した米国について「むしろわれわれが失望だ」と批判していた。
この動画は削除されたが、「綸言汗の如し」と言われるように、政治家の発言は削除しても消えないで一人歩きする。
NHKの会長をはじめ安倍首相のお友達人事といわれる経営委員も、品格を疑わせるような発言が続いている。
それは安倍首相の本質の影ではないだろうか。
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