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2014年2月17日 (月)

「徴介護制」はあり得るか?/花づな列島復興のためのメモ(308)

介護の人手不足は深刻である。
介護の質を向上させるための制度改革は、研修の余力がないという理由で、延期に次ぐ延期である。
⇒2014年2月 6日 (木):揺れる介護福祉士養成制度/花づな列島復興のためのメモ(304)

一方、人口の高齢化は急速に進んでいく。
「2025年問題」といわれる問題がある。
団塊の世代といわれる1947~49年生まれの人々が、2025年には大挙して後期高齢者の仲間入りをしてくるのだ。
2025a140205
東京新聞2月5日

その結果、2012年における後期高齢者(75歳以上)は1511万人であるが、2025年には2179万人になると予測されている。
全人口に占める比率は18%と、およそ5人に1人である。
1人の現役世代が支える高齢者の数は急速に増大して行く。
Photo_3
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014/sy014f_a.htm

高齢者は75歳を境に、前期と後期に区分けされている。
要介護認定の人は、前期高齢者(65~74歳)では4%なのに対し、後期高齢者では29%だ。
75歳以上人口が増えることは、介護される側の人数がそれだけ増えるということである。
介護認定の率が高い人の人数が増えるということは、要介護者の人数の絶対値が爆発的に増大することを意味する。
介護サービスの給付(費用)も増える。
介護保険の総費用は、制度の始まった00年度の3.6兆円から、13年度に9.4兆円へと増加し、25年には約20兆円まで達する見込みだという。
どういう制度設計になっているのだろうか?

問題はいくつかあり、それらは輻輳している。
まず、介護の現場でプロとして働く介護福祉士の勤労条件の問題がある。
介護職が、低賃金後負荷労働である現実が広く認識されるようになった結果、介護福祉士の養成課程を志望する若者は非常に少ないのが現実だ。
人手不足→質の向上が進まない→勤務条件が改善されない→人手不足
こういうプロセスが、エンドレスのループになっている。

この現実をどうするか?
先日、妻と、介護の義務化、つまり徴兵ならぬ徴介護のようなことをしないと、絶対的な人手不足は解消されないのではないか、というようなことを話した。
しかし、現実には制度の設計が難しくて、実現不可能だろうということで終わった。

しかし、徴介護制を真剣に検討している人がいることを、日経ビジネスオンライン2月5日号の記事で知った。
中川雅之『「徴介護制」が問いかけるもの-カネを使わない福祉の可能性』によれば、古閑比佐志氏である。
古閑氏は脳神経外科の専門医で、『徴介護制度』という書籍が、電子化されている。

中川氏によれば、古閑氏が提案する制度の概要は、下記のようなものである。

(1)例外を除くほぼすべての国民に、一定期間の介護ボランティアへの参加を課す。
(2)徴兵制とは関係ない(兵役の代替として課すものではない。蛇足ながら、古閑氏は徴兵制に反対する立場)。
(3)専門技能がない制度参加者は、簡単な家事代行や専門職の人材の補助を中心業務とする。豊富な労働力を現場に投入して専門職の人材にかかる雑務の負担を減らし、彼らが高度な介護サービスに専念できるようにする。
(4)年金などに関連付けて、参加者の利益を担保する。

たとえば、介護を高校のカリキュラムで必修化し、大学入学の要件にすることなどである。
コストを抑えながら労働力を確保し、福祉や公共に対する生徒らの理解も深めるという一石三鳥という提案だ。
たとえばドイツでは、「良心的兵役拒否」として社会福祉への代役参加を許可しているという。
「介護施設での従事」が兵役とバーターになって、兵役を免除される制度らしい。
しかし、何の訓練も無く「徴介護制」で介護職従業者を導入したら、介護の仕事は非常に危険だ、という批判もある。

認知症の人の踏切事故などが問題になっているが、専門的な知識を持たないと、事故が多発する結果になるのではないか、ということである。
義務と責任、負担の平等、基本的人権等の、生きることの基本に関わる問題である。
否応なく生き方を再考しなければならない時のようである。

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