池上彰氏の解説する城南信金理事長吉原毅氏の脱原発論/原発事故の真相(104)
東京都知事選が、明日投開票を迎える。
今日の大雪が、明日どういう影響を及ぼすか?
普通に考えれば投票率を下げる方向に作用するだろうが、それが当落に響くかどうか?
マスコミは、自公両党が推す舛添要一元厚生労働相が優勢に選挙戦を進めていると情勢分析している。
政権は都知事選を「安倍政権の中間評価として勝ちに行く」(与党幹部)という体制で臨んでいる。
争点はいろいろあるがm際立っているのが、原発推進か脱原発かであろう。
⇒⇒2014年1月15日 (水):原発を問う都知事選/花づな列島復興のためのメモ(294)
⇒2014年1月26日 (日):都知事選の争点について/花づな列島復興のためのメモ(300)
⇒2014年1月23日 (木):文明や国のかたちが問われる都知事選/花づな列島復興のためのメモ(299)
脱原発を争点に引っ提げ、細川護煕元首相が小泉純一郎元首相の支援を得て立候補している。
脱原発の旗幟を鮮明にしている候補には、他に宇都宮健児前日弁連会長が社民・共産両党の支援のもとに選挙戦を進めている。
一部の文化人と言われる人たちが、細川・宇都宮の一本化を要請していたが、成らずということで投票日を迎えることになった。
舛添氏を追う細川氏と宇都宮氏は、主要な訴えの「脱原発」の争点化がうまくいかなかったとも言われている。
舛添氏も脱原発を口にはしているが、選挙対策であることは見え透いている(ように思える)。
都民の判断はどうであろうか?
朝日新聞2014年2月3日
分かりやすい解説が定評の池上彰さんの『池上彰が読む小泉元首相の「原発ゼロ」宣言』径書房(2013年12月)を読んでみた。
池上さんが脱原発派であることは容易に推測できるが、細川or宇都宮のどちらを支援しているか明示的には書いていない。
しかし、本書のタイトルおよび構成を見れば、細川氏だろうなと思う。
池上さんは、自分の考え・主張を語るというよりも、インタビュアーとしてオピニオン・リーダーから話を聞き出して、読者に提示するというスタンスが基本である。
本書では、小泉氏の発言のレビューを導入部とし、池上氏が授業を持っている東京工業大学の学生との討論、マスコミでいち早く小泉脱原発発言を紹介した毎日新聞の山田孝男さんとの対談でレビューを補足している。
本書の中心は、細川氏、城南信用金庫理事長・吉原毅氏、元三菱銀行取締役NY支店長・末吉竹二郎氏へのインタビューとそれについての池上さんの解説である。
私は、吉原さんの意見に大いに感ずるものがあった。
城南信用金庫が信金の雄であることは現役の時から知っていた。
また、「3・11」の後、2012年11月に城南総合研究所というシンクタンクを設立し、脱原発の論拠となるような調査や提言を行っていることも、新聞記事で知っていた。
⇒2012年11月25日 (日):原発の立地をどう判断するか?/花づな列島復興のためのメモ(162)
しかし、その発想がどういう文脈から出てくるかについては、よく知らなかった。
吉原さんは、そもそも信用金庫という金融機関がどうしてでき、どういう性格であるべきか、から語っている。
それは働く人が自分たちの住む地域の人々の幸せのために、ということで始まった協同組合運動の1つであり、農協、生協などとルーツを同じくするということである。
しかし、現在多くの組織が、株式会社と無差別のようになっている。
城南信金の場合、創業者の遺訓として、「一に公益事業、二に公益事業、三に公益事業、ただ公益事業に尽くせ」があるそうである。
そして三代目理事長の小原鐵五郎氏の口癖が、「銀行に成り下がってはならない」であった。
半沢直樹というTVドラマが人気になったが、人気の理由は利益優先の銀行に対する反抗が、多くの人の共感を呼んだのではないか。
「銀行に成り下がってはならない」は、そういう金融機関になってはならないということだろう。
吉原さんも、「3・11」以前は原発肯定派だったという。
しかし、原発事故で大きな違和感を感じた。
これだけの事故が起きているにもかかわらず、政府も東電も誰ひとり謝らないし、責任もとらない。
テレビや新聞は、「原発を止めると日本経済は壊滅だ」というような記事を流し始める。
明らかな世論操作・誘導のように感じられる、というのが吉原氏の判断である。
原発事故で南相馬市のあぶくま信金が、採用内定を取り消さなければならないことになり、内定者の引き受けを頼まれた。
城南信金はもちろん引き受けたが、あぶくま信金は営業地域の半分が立入禁止区域なってしまっているにもかかわらず、誰からも何の謝罪もない。
金曜日の国民デモ隊にも、一員として参加している。
そして、自らを、原発反対を主張する保守主義者だという。
タヌキのような顔をした財界の代表・経団連現会長とは隔絶した見識だと見受けた。
現在の日本には稀有の、経済界のリーダーではなかろうか。
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