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2014年2月18日 (火)

黒木華さんの銀熊賞受賞を賀す

子どもが小さいころ、『ちいさいおうち』岩波書店(1964年4月)という絵本を買った。
原作は、バージニア・リー・バートンという人の『The Little House』、邦訳は石井桃子さんによる。
子どものお気に入りの絵本だった。
子どもにせがまれて、何回も読んで、暗記するほどだった記憶がある。

しかし、いつの間にかどこかへ散逸してしまって、その存在すら忘却しかけていた。
近くのシネコンへ行ったとき、同名の映画が封切られていることを知った。
絵本の話ではないことは分かっていたが、それ以外の情報はないままに、観てみようということになった。
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http://www.chiisai-ouchi.jp/images/download/wall/pc/chiisai-ouchi_p_1440_900.jpg

話の内容は、「純粋な不倫」というような形容矛盾ともいうべき物語である。
不倫の当事者は、松たか子演ずる美貌の人妻・時子と、吉岡秀隆演ずる夫の会社でデザインを担当する大学出たての社員・板倉。
それだけでは通俗的な話に過ぎないが、直木賞受賞作にはそれなりの仕掛けがあった。

タキという山形出身の女中が自叙伝を書くという趣向で、現代と戦争に傾斜していく昭和の時代が交互に描かれる。
この女中(昭和前期には、立派な職業だった)が主人公であり、美貌の人妻は脇役ということになる。
昭和前期のタキを演じたのが黒木華さんで、現代のタキを演じるのが倍償千恵子さんである。
黒木華さんという女優は、朴訥な娘をうまく演じているとは思った。

この映画のオフィシャルサイトをみると、『草原の椅子』だとか『舟を編む』などに出演している。
これらの作品は観たはずであるが、余り印象に残っていない。
タキ役の黒木さんが、第64回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した。
日本人の最優秀女優賞は、左幸子さん(1964年)、田中絹代さん(1975年)、寺島しのぶさん(2010年)に続き4人目で、最年少受賞である。
先ずは祝福したい。

板倉は絵の才能があるが、もともとは建築家志望で、高台に建っていた赤い屋根の家に興味を持っていた。
絵本の『ちいさいおうち』を連想させる。
原作の中島さんもそれを計算に入れてタイトルにしたのだろう。
その家は上司(片岡孝太郎)の家であり、上司の家を訪ねて妻の時子と意気投合することになる。

タキは若く美しくお洒落な時子に、強い憧れを抱いていたが、板倉にも秘かに好意を寄せていた。
戦争が激しくなり、タキが山形へ戻った後、高台の家は、東京大空襲で灰燼に帰し、夫婦は防空壕で一緒に死んでしまう。
タキには、ずっと内緒にしていた秘密があった。
それはタキの又甥の健史(妻夫木聡)が・・・、これ以上の解説は止めておこう。

この映画のもう一つののテーマは、戦争ではないだろうか。
二度と戦争はすまい、という決意でスタートした敗戦後の日本であるが、昨今の安倍首相を見ていると危ういものを感じるのは私だけではないだろう。
都知事選で田母神俊雄というキワモノ的な候補者が、特に若年層からかなりの支持を集めた。
どういう思考回路で田母神氏支持にいたったのだろうか。
⇒2014年2月11日 (火):都知事選の結果と暗い予感/花づな列島復興のためのメモ(306)

「歴史は繰り返す」という有名なマルクスの言葉がある。
『ルイ・ボナパルトのブリュメール 18 日』という本の中に出てくる言葉で、次のように書いている。
「ヘーゲルはどこかで述べている、すべての世界史的な大事件や大人物はいわば二度あらわれるものだ、と。一度目は悲劇として、二度目は茶番(farce)として、と。」
まあ繰り返さない程度には人間の理性というものがあると信じてはいるが。

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