現代短歌の伝道師・小高賢/追悼(45)
歌人の歌人小高賢さんが、11日に千代田区の事務所で亡くなった。
享年69歳。
慶大経済学部卒業後、キヤノンを経て講談社に入社し、編集者となった。
1972年編集者として馬場あき子さんに会い、作歌を始めるた。
編集者としては、週刊現代編集部、講談社現代新書編集長などう務めた。
講談社で、学術局長、学芸局長、取締役、顧問などを歴任し、「選書メチエ」シリーズや「現代思想の冒険者たち」シリーズを創刊するなどの業績を遺した。
歌人としては、1978年「かりん」創刊に参加し、2000年『本所両国』で第5回若山牧水賞受賞した。
本名は鷲尾賢也、第3代日本労働組合総連合会会長を務めた鷲尾悦也は実兄である。
69歳といえば私と同級生ということになる。
気になるのは、事務所で亡くなっているのが早朝発見されたという報道である。
推測になるが、仕事をしていて突然の変調を来たしたのではないか。
まったく他人事ではない気がする。
われわれの世代は、まだまだ体力があるつもりで時間に無頓着な働き方をしがちである。
私が手にしたのは、『現代短歌の鑑賞101』新書館(1999年4月)、『老いの歌――新しく生きる時間へ』岩波新書(2011年8月)などだけであり、全体像を語るほどのものは持っていない。
しかし、『現代短歌の鑑賞101』は、広大な現代短歌の世界を代表する101人の歌人について、その代表歌30首が選ばれている。
よく編まれたアンソロジーで、俯瞰的認識を得るのに格好の書である。
『老いの歌――新しく生きる時間へ』は、日本社会が急速に超高齢社会を迎えようとする現在、いろいろな意味で参考になる書であろう。 余生ではない「老い」をどう生きるか?
わが国の総人口は、平成24(2012)年10月1日現在、1億2,752万人で、そのうちの65歳以上の高齢者人口は、過去最高の3,079万人(前年2,975万人)となり、総人口に占める割合(高齢化率)も24.1%(前年23.3%)となった。
もはや高齢者といえども「余生」とは言えない。
小高さんの説くように、「私」を歌う文芸である短歌は、「老い」の表現にとても相性がいいのかも知れない。
私もいよいよ本格的な「老い」の季節である。
自分ではあまり意識しないが、客観的事実はどうしようもない。
できれば、この優れた同世代の編集者の声をリアルタイムで聞く時間をもうちょっと欲しかった。
早すぎるのではないか、残念である。
合掌。
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