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2014年1月27日 (月)

マルハニチロ農薬混入事件(2)/ブランド・企業論(17)

食品大手マルハニチロホールディングス傘下の「アクリフーズ」群馬工場で製造された冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出された事件で、群馬県警は25日、偽計業務妨害の疑いで容疑者を逮捕した。
まだ容疑者を逮捕したというだけで、動機や背景等は未詳である。
⇒2014年1月12日 (日):マルハニチロ農薬混入事件/ブランド・企業論(16)

逮捕されたのは、同工場に勤務する49歳の契約社員で、
県警が任意で事情を聴いた後、行方不明になっていた。
失踪して今月24日に発見されるまでの10日間のことは「覚えていない」と供述しているとのことである。

容疑者が浮上した決め手の1つが、マラチオンが検出された冷凍食品の製造日時だった。
マルハニチロホールディングス(HD)が混入を明らかにした9点は製造時間帯がバラバラだった。
従業員の勤務記録を精査した結果、容疑者が混入させたとしても矛盾はないと結論づけた。
つまり、現時点では、彼の容疑の蓋然性が高いというだけである。
冷凍食品の製造から出荷までの工程図は以下のようである。
写真
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012602000108.html

容疑者はピザの生地の生成・焼成を担当していた。製造ラインには生地をねるミキサーや型抜きするカッター、オーブンなどがあり、阿部容疑者は包装前の段階での業務にあたっていた。容疑者が包装室で商品の品質確認をする場合もあったという。
Ws000001
http://mainichi.jp/shimen/news/20140126ddm041040158000c.html

容疑者はどんな人間像なのだろうか?

 近隣住民の話では、阿部容疑者はかつてカブトムシやクワガタムシを数多く飼育し、近所の子どもたちに「虫博士」と慕われていた。小学生のころにクワガタムシの育て方を容疑者宅で教わったという男性(20)は「虫専用の小部屋があって、飼育用のケースが並んでいた。面倒見のいい人で、どこでどんな虫が捕れるかも丁寧に教えてくれた」と話す。
同上

失踪直前までは普段通り出勤していたという。
年功制から能力制への給与体系の見直しに伴い、容疑者の給与は13年から減額されたらしいが、会社は要飛車会社への不満が出たことはなかったとしている。
私の経験では、契約社員が会社に直接不満をぶつけることはほとんどないと思う。

契約社員と聞いて、世間を震撼させた秋葉原の通り魔事件を思い出した。
不遇な労働条件に置かれた従業員の不満が内攻し、ある日臨界点を超えて他人が思いもよらない犯行に走る。
⇒2008年6月11日 (水):秋葉原通り魔と心の闇
⇒2008年6月22日 (日):通り魔をヒーロー視する人たち

アベノミクスは基本的に企業優遇策である。
契約社員も能力制も、制度として否定するものではないが、企業が都合のいいように運用すれば、類似の事件が増える可能性もあろう。
容疑者のような立場は、「負け組」として冷遇されることになる。
親会社のマルハニチロとアクリフーズの社長は揃って辞任するようだが、それが解決策になるとは思えない。

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コメント

逮捕はされましたが、報道を聴くと、ちょっと変わった人間、という、事件とは少し遠ざかった情報ばかりになっていて、犯人なんだと確信出来るものが無いような感じがします。
風変わりな人である為に、阻害され、何かあった時には疑われ、そして、社会から排除されてしまう、
ー ー ー 万が一、冤罪だとしても、晴らされることは困難であるようにも思われます。
安易に人を信じればバカを見る、でも、人が人を疑ってばかりでも、良い社会にはなりません。
犯罪者を出してしまったその工場は、人が生きる所として問題があった、ということを考えない訳にはいきません。薄給も、その問題の一つです。
この工場のことが、日本全体のことでなければいいのですが・・・・。

投稿: 五節句 | 2014年1月28日 (火) 18時12分

五節句様

コメント有り難うございます。
最近の安倍首相の姿を見ていると、ますます危うい感じになってきているように思います。もちろん犯罪を犯した人が正当化されるものではないでしょうが、仰るように「犯罪者を出してしまったその工場は、人が生きる所として問題があった」のでしょうね。
「成長戦略」が言われていますが、「成長の限界」を意識していないと、生存すら脅かされることになるような気がします。

投稿: 夢幻亭 | 2014年1月28日 (火) 22時22分

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