マルハニチロ農薬混入事件/ブランド・企業論(16)
食品大手マルハニチロホールディングス傘下の「アクリフーズ」群馬工場で製造された冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出された。
マラチオンとは以下のような構造式の物質である。
http://www.shokukanken.com/news/topics/140103-1515.html
接触性の殺虫剤として、農耕地のアブラムシ・ハダニ・カメムシなどに用いられる他、ゴミ埋立地などのハエ・蚊の駆除や、動物用医薬品としても使用される。
苦情を受けてから自主回収まで1カ月半を要した。
余りにも遅い対応ではなかろうか。
アクリフーズによると、最初に苦情を受けたのは11月13日。ミックスピザを購入した静岡県内の消費者から「石油、機械油のようなにおいがする」と電話があった。製造した群馬工場では、9月に設備を改修したため、同社は塗料のにおいが付着した可能性が高いとみて調査を進めた。
・・・・・・
その後同様の苦情が増え、12月3日には計9件に。4日になってようやく外部機関に分析を依頼した。塗料、農薬などに使われる「酢酸エチル」などの混入が判明したのは、苦情から1カ月後だった。
この段階でも、同社は「塗料の付着が原因」と考えていた。農薬によるにおいでないことを証明するため17日、外部機関に残留農薬の検査を依頼。27日、農薬「マラチオン」が検出されたとの結果が出た。28、29日、流通業者などに自主回収を要請するとともに、29日、初めて記者会見を開き、事実を公表した。
http://mainichi.jp/select/news/20140101k0000m040121000c.html
消費者から、「異臭がする」というクレームが続いた時点で、なぜ塗料の可能性以外を疑わなかったのか?
同社は、返品された商品のうち19点を国の残留農薬基準(0.01ppm)より2ケタ高い1ppmを基準に検査していたという。
広報担当者は「検査期間を早めることを優先したが、検査方法をきちんと説明すべきだった」と釈明している。
検査期間を早めることを優先した?
単純に考えて、2ケタも精度が異なるのでは検査にならないのではないか?
安全性の確保は、食品メーカーとして基本的なことであろう。
「検査期間を早める=コストダウン(安上がり)」ということではないのか?
マルハニチロホールディングスとアクリフーズ社には、農薬の混入など「あり得ないこと」という先入観があったのではないか?
「想定外の事態」である。
しかし、群馬県警は工場従業員の作業靴からマラチオンを検出した。
マラチオンは外部から持ち込まれたとの見方のようであるが、いずれにせよ工場内部にマラチオンは存在したということだろう。
不特定多数に供する飲食物への毒物混入や汚染は、りっぱな犯罪である。
流通食品毒物混入防止法という法律ができたのは、世間を騒がせたグリコ・森永事件がきっかけだった。
「かい人21面相」を名乗る犯人が、青酸入り菓子をばらまき、世の中を不安に陥れた。
未だ解決していないが、事件発生からもう30年になる。
刑法に水道などへの毒物混入や汚染を罰する「飲料水に関する罪」が制定当初からあった。
水道は、文明化の象徴であろうが、不特定多数が食べる可能性のある食物への毒物混入は想定されていなかった。
流通食品毒物混入防止法を適用するためには、農薬が流通食品毒物混入防止法に規定する毒物にあたるかどうかが問題になる。
しかし、多くの薬が毒にもなる場合があることを考えれば、毒物の範疇について、杓子定規の解釈をすべきではないだろう。
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