原発を問う都知事選/花づな列島復興のためのメモ(294)
細川護煕元首相の出馬で、都知事選の焦点として、原発に対する姿勢が明確になった。
小泉純一郎元首相の表現を借りれば、「原発ゼロでも日本は発展できるというグループと原発なくして日本は発展できないというグループの争いだ」ということになったと見ていいだろう。
二者択一で敵と味方を峻別する小泉流だ。
安倍首相を「抵抗勢力」とし、原発問題を一挙に都知事選の争点に押し上げた。
細川元首相には、かつての細川政権時代の関係者が再結集しているという。
細川氏を推すグループは、1992年に細川氏が結成した日本新党や、93~94年の細川政権で連携を深めたかつての新党さきがけの出身者が中心になっている。
政策面で助言するのは、さきがけ代表代行を務め、細川内閣で首相特別補佐だった田中秀征元経済企画庁長官だ。脱原発論者の1人で安倍晋三首相が進める保守色の強い政策にも批判的な立場を取る。政策づくりには日本新党で参院議員に初当選した円より子氏らも参加している。
細川氏に期待するのも細川政権にゆかりのある関係者が目立つ。日本新党出身の民主党の海江田万里代表、非自民8党派をまとめて細川首相擁立を主導した生活の党の小沢一郎代表らだ。ただ20年前の顔ぶれが並ぶだけに若い世代などを含めて幅広い支持が広がるか不安な要素もある。
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO65191570R10C14A1PP8000/
上記記事で政策面で助言すると書かれている田中秀征元経済企画庁長官は、ダイヤモンド・オンライン誌の2014年1月15日号に、『都知事選は原発の是非を問う選挙になった!』という文章を寄せている。
田中氏は次のように書いている。
これに対して安倍晋三首相は外遊先のモザンビークで記者団にこう語った。「エネルギー政策は東京都だけでなく、国民みんなの課題だ。都知事としての課題もバランスよく議論されるべきだ」
これは日本時間13日未明の発言である。14日の両元首相の会談を強く意識し、それを牽制する狙いと受け取られる。
安倍首相は、原発の是非が、都知事選の突出した争点となることを恐れているのだろう。
しかし、この首相発言も逆に原発問題の争点化に拍車をかけている。
12日と13日に実施されたANNの世論調査によると、都知事選で「原子力発電の在り方」が争点になってもよいとした人が、何とほぼ7割に達した。もはや争点化を回避できないどころか、それに異論を唱える人は「議論を封じて原発を推進する人」と見なされかねない状況となった。
細川氏の行動を批判して、甘利経済再生相は、細川氏の出自に絡めて「殿ご乱心」と皮肉ってみせた。
甘利明経済再生相は10日の閣議後会見で、脱原発を争点に東京都知事選に出馬を検討している細川護煕元首相(75)について「殿ご乱心」と話した。
甘利氏はその理由について、「エネルギー政策は国策として、国民の利益を考えて取り組むべきだ」と説明。全原発が停止し、代替の火力発電用の燃料となる液化天然ガス(LNG)の輸入などで、1日約100億円の国民の利益が海外に流出していると指摘し、現状を放置することは「政治家として努力が足りない」と話した。
また、安易に火力発電に頼り続けることは地球温暖化の防止の観点でもマイナスだと指摘した。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140110/trd14011011340006-n1.htm
しかし、田中秀征氏は上掲誌において、次のようにも書いている。
細川、小泉両氏には、原発を容認してきた「世代の責任」への痛切な思いがある。単に1人の世代人としてではなく、トップの政治指導者として容認、推進してきた反省と後悔を共有している。その深さは同じく「世代の責任」を感じる私などとは比べものにならないだろう。
2人をよく知る私から見て、捨て身の決意で“最後の仕事”に挑む彼らの「本気」を覆すことのできる人がいるはずはない。
同感である。
政府は、「エネルギー基本計画」案で、原発を「基盤となる重要なベース電源」と規定したが、ここにきて 茂木敏充経済産業相は14日の閣議後の記者会見で、エネルギー基本計画案を修正する方針を示した。
安倍政権が原発の必要性を強調する内容を変えることはないだろうが、都知事選での争点化をできるだけミニマムにしようということだろう。
しかし、大きな争点になることはもはや避けられない。
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