文明や国のかたちが問われる都知事選/花づな列島復興のためのメモ(299)
今日告示された東京都知事選は、国の原発政策とどう向き合うかが大きな争点となっている。
東京都に商用の原発はないから、都知事選の争点にするのは間違っている、という人もいる。
中には、原発を争点化して勝とうとするのは「卑怯であり、いやしい」という森元総理のような人もいる。
⇒2014年1月22日 (水):先行き不安な森五輪組織委員会会長/花づな列島復興のためのメモ(298)
私は何を争点として掲げるかは、候補者の自由であると考える。
争点として相応しいかどうか、その争点に関してどの候補者を選ぶかは、有権者個々人の判断であろう。
東京都は日本全体の1割を超す1,300万人の人口を抱える。
予算規模は12兆円。
国家として見ても、スウェーデンに匹敵する規模であって、決して小さいとはいえない。
世界的に見ても屈指の規模を有する都市であることは間違いない。
そのような巨大都市はどうして形成されたのか?
いろいろな要因があるだろうが、究極的には、利便性と効率性において勝っていたからであろう。
人も企業(組織)も、利便性と効率性を求めて集積する。
その集積は、エネルギーによって支えられる。
特に、電力の使用が可能になって、人と企業(組織)はエネルギーの生産場所と離れた場所にも集積できるようになった。
原子力という効率性の高いエネルギーを手にすることによって、その傾向に拍車がかかった。
人口の集積する場所から遠く離れた場所にエネルギー基地を作り、そこから電線を通して電力を移送する。
電力は地域独占的に供給される。
大消費地東京の電力は、東京電力によって(ほぼ)独占的に供給されているのが現状である。
その東京電力が、福島第一原発の収束の見通しが立っていない。
常識的に考えるならば、存続ができないような状態なのだ。
一般論として、効率性と安全性はトレードオフである。
高い効率性は、安全性を犠牲にした上に成り立つ。
このように考えれば、原発を争点とすることは、文明のあり方、国家のかたちをどう考えるかとイコールである。
震災からの復興の仕方にも関係するテーマである。
⇒2011年3月22日 (火):津々浦々の復興に立ち向かう文明史的な構想力を
2020年には、オリンピックという最大級のイベントが開催されることが決まっている。
イベントこそ未来社会の方向性を提示する良い機会である。
とすれば、都知事選の争点として、原発はまことに相応しいのである。
有力と目されている候補者の原発に対する姿勢は以下のようである。
http://mainichi.jp/shimen/news/20140123ddm001010184000c.html
残念ながら、私は東京都民ではないから1票を投じることはできない。
しかし、結果は間違いなく私の人生にも関わってくるだろう。
はっきりした原発依存論者は、田母神氏だけである。
その田母神氏は、安倍首相と国家観、歴史観が一緒だと自ら言っている。
安倍首相の本質を示して見せたと考えられるが、森元首相にしろ田母神氏にしろ、変に韜晦しないので分かりやすいとも言える。
ちなみに田母神氏の歴史観は、たとえば以下の通りである。
⇒2009年1月12日 (月):田母神氏のアパ論文における主張…対華21箇条要求
⇒2009年12月19日 (土):「天皇の政治利用反対」という錦の御旗(3)張作霖爆殺事件
通説とは異なるものである。
安倍首相も、田母神氏と同じだとすれば、中国の到底受け入れるところではないだろう。
この主張に沿って教科書を書けば、検定すら通らないのではないか。
思想・信条の自由はあるが、首相の歴史観がそれでいいのだろうか?
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