三菱マテリアル工場の爆発事故/ブランド・企業論(15)
四日市市の三菱マテリアル四日市工場で爆発事故が起きた。
静岡新聞1月10日
石油化学技術者として職業生活をスタートした私には他人事とは思えない。
私の勤めていた工場でも、死者こそ出ないものの、事故は起きた。
化学系の工場では、異常反応による爆発事故はつきものともいえるが、根絶を目指さなければならないだろう。
安全第一である。Wikipediaでは次のように説明されている。
安全第一 (safety-first)は、アメリカ合衆国で誕生した標語である。
1900年代初頭、アメリカ国内では不景気のあおりを受け、労働者たちは劣悪な環境の中で危険な業務に従事していた。 結果、多くの労働災害に見舞われていた。
当時、世界有数の規模を誇っていた製鉄会社、USスチールの社長であったエルバート・ヘンリー・ゲーリーは労働者たちの苦しむ姿に心を痛めていた。 熱心なキリスト教徒でもあった彼は人道的見地から、当時の「生産第一、品質第二、安全第三」という会社の経営方針を抜本的に変革し、「安全第一、品質第二、生産第三」としたのである。
この方針が実行されると、労働災害はたちまち減少した。 品質・生産も上向いた景気の波に乗り、この安全第一という標語はアメリカ全土に、やがて世界中に広まった。
日本において安全第一の標語は工事現場や工場などで掲示されており、目にすることができる。「安全」と「第一」の間に緑十字が配置されることが多く、旗や垂れ幕のほか、作業員のヘルメットや作業車両などに書かれる。
もちろん三菱マテリアル社でも安全第一は実践されていたであろうが、事故は起きた。
有名な「ハインリッヒの法則」の教えるように、事故未満のインシデントを見逃さないようにするしかないであろう。
⇒2013年5月26日 (日):放射性物質漏洩事故の認識/原発事故の真相(71)
市消防本部によると、爆発したのは、円筒形で金属製の熱交換器。
爆発した熱交換器は同社が子会社に発注した特注品であることが分かった。同社は熱交換器のふたを取り外す際の具体的な作業マニュアルを作っていなかったが、このようなマニュアル作りは同業者や業界団体などでは常識とされていることも判明。マテリアルの安全軽視ぶりが改めて浮き彫りになった。
http://mainichi.jp/select/news/20140111k0000m040147000c.html
同工場は水素ガスとトリクロロシランという化合物を混合させ、半導体の材料などにする多結晶シリコンを製造している。
トリクロロシランというのは、下図のような化合物であり、分子構造的にも反応性が高いと推測される。
Wikipedia
工業的には、トリクロロシランは塩化水素のガスを300 ℃ でケイ素の粉末に吹き付けて製造する。
下式のように、トリクロロシランとともに水素が生じる。
Si + 3 HCl → HSiCl3 + H2
この水素が、爆発したのであろうか?
正月休みにメンテナンスをすることが多いが、事故はその後の操業開始に際して起きたのであろうか?
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