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2014年1月19日 (日)

ロボットが東大に入る日/知的生産の方法(78)

大学入試センター試験が終わった。
1日目の昨日、静岡県ではJR線の信号故障でダイヤの乱れがあり、時間を遅らせるなどのハプニングがあった。
私たちの頃は、共通一次試験もなく、一発勝負だった。
どちらがいいのか試験制度に決定版はないだろうが、せめて入試くらいはなるべく公平な条件の下で行われるのが望ましい。
社会人になれば否応なく不公平な条件にさらされることになるのだから。

1月7日の日本経済新聞に、「人類を待つ天国と地獄-ロボットは東大の夢を見るか」という記事が載っていた。
ロボットという言葉は、チェコの作家カレル・チャペックによる造語である。
チャペックは、戯曲『R・U・R(エル・ウ・エル)』(1920年)において、「人造人間」を意味する言葉として、ロボット(robot)を使用した。
『R・U・R』とは、「Rossum's Universal Robots」の略であるが、robotは、ギリシャ語arbeit=働く、から転じたチェコ語のrebotaを語源としているということである。
⇒2010年5月23日 (日):「恐竜の脳」の話(4)山椒魚

ロボット開発の現在の焦点は、人間の脳のしくみの解明への貢献であろう。
ヒトはどうして複雑で抽象的な概念を獲得していくか?
あるいは、加齢等により次第に認知能力が衰え、認知症といわれる段階に至るか?
これらは実に興味あるテーマである。
⇒2010年6月27日 (日):赤ちゃんロボットと認識の発達過程
⇒2010年6月30日 (水):ロボットによる脳進化の理解

将棋の世界で、人とコンピュータが対戦する「電王戦」では、、第2回の昨年、コンピュータが3勝1敗1分けという結果だった。
コンピュータの圧勝と言わなくても、優位であることは間違いない。
⇒2013年5月 5日 (日):将棋ソフトの進歩と解説ソフトの可能性/知的生産の方法(52)

このように、コンピュータ(ロボット)は、脳活動のある局面ではすでにトップレベルのヒトと互角に争うレベルに達している。
経済学者のケインズは、1930年に、世界は技術革新による省力化のスピードに雇用の拡大が追いつかない、としているそうだ。
「技術的失業という病」である。
一方で、技術進歩が続けば、2030年までには、人類は労働なしで食べていけるようになるとも。

人類を待つ天国は後者であり、地獄は前者ということであろう。
実際に、和文(邦文)タイピストというのは、私の若いころ、少なくとも1970年代初頭位までは、女性の専門職の1つであった。
ひっくり返った2800程度の文字を選択して、1字ずつ印字したのだ。
活字の場所を記憶するのは必ずしも容易なことではない。
⇒2011年2月21日 (月):知的余生の方法とノマドスタイル/知的生産の方法(11)
⇒2012年11月29日 (木):日本語の表記の豊かさと仮名の創造/知的生産の方法(26)

ワープロソフトが普及し、かな漢字変換が当たり前になった今日では想像すら難しいだろう。
結果として、和文タイピストという職業は絶滅した。
朝日新聞の「天声人語」1月4日は、次のように書く。

機械の職場進出が大きく広がり、人々の雇用を奪う可能性があるという見通しに、どきっとする。もっともそんな流れはとっくにあった。まず職を失ったのが女性だったから大騒動にならなかっただけだという指摘にも、はっとする

明示的には書いていないが、「職を失った女性」の代表格が、和文タイピストと言えるだろう。

それでは、大学入試問題を解く、というようなジャンルではどうか?
「ロボットは東大に入れるか(Todai Robot Project)」は、国立情報学研究所(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構)が中心となって進めているプロジェクトである。
Photo
http://21robot.org/

1980年以降細分化された人工知能分野を再統合することで新たな地平を切り拓くことを目的としている。
具体的なベンチマークとして、2016年度までに大学入試センター試験で高得点をマークすること、また2021年度に東京大学入試を突破することを目標に研究活動を進めている。

研究所の新井紀子教授は、「来年は箱根駅伝に出ている(名門私立)大学のA判定がほしい」とのこと。
代ゼミのセンター模試は平均点以下だったが、私立大学の学部のほぼ半数で、合格可能性80%以上のA判定を獲得した。
私の感覚では、計画通り東大に入れる学力を備えるのはほぼ間違いないと思う。
かの米長邦雄さんは、「兄弟は頭が悪いから東大に行ったが、自分は良かったから棋士になった」と言ったことがある。
⇒2012年12月19日 (水):さわやか or 泥沼流・米長邦雄さん/追悼(23)
ロボットが東大に入る時代は目の前に来ている。
その時、残る職業は何だろうか?

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