『かぐや姫の物語』と富士山信仰/富士山アラカルト(7)
『かぐや姫の物語』というアニメ映画を見た。
高畑勲監督・スタジオジブリ制作である。
http://kaguyahime-monogatari.jp/
今まで、アニメなんぞ、という気でいたが、堀越二郎を描いた宮崎駿の『風立ちぬ』が良かったので、アニメを再評価したところである。
言うまでもなく、『竹取物語』を原作とした作品で、ストーリーはほぼ忠実に『竹取物語』に添っている。
しかし、今日的な解釈がされているので面白かった。
『竹取物語』は日本人なら誰でも知っている最古の物語である。
紫式部は、『源氏物語』の「絵合」の巻において、『竹取物語』は「物語のいでき始めのおや」書いた。
しかし、その作者、成立時期等は不明である。
この機会に、注釈本を頼りに、読んでみた。
エンディングの部分は次のようである。
大臣、上達部を召して、「いづれの山か天に近き」と問はせたまふに、ある人奏す、「駿河の国にあるなる山なむ、この都も近く、天も近くはべる」と奏す。これを聞かせたまひて、
あふこともなみだにうかぶ我が身には死なぬ薬も何にかはせむ
かの奉る不死の薬壺に文具して御使に賜はす。勅使には、つきのいはがさといふ人を召して、駿河の国にあなる山の頂に持てつくべきよし仰せたまふ。峰にてすべきやう教へさせたまふ。御文、不死の薬の壺ならべて、火をつけて燃やすべきよし仰せたまふ。
そのよしうけたまはりて、士どもあまた具して山へのぼりけるよりなむ、その山を「ふじの山」とは名づける。
その煙、いまだ雲の中へ立ちのぼるとぞ、いひ伝へたる。
つまり、「ふじの山」の名前の由来が語られている。
それは、「不死の薬」の不死ではなく、「士どもを大勢引き連れて山に登った」ので、この山を「富士の山」と名付けた、としている。
その山は、「駿河の国にあなる」ということだから、世界文化遺産に登録された今の富士山に相違ない。
『竹取物語』は平安時代に成立したとされるが、平安時代を通じて、富士山はたびたび噴火を繰り返した。
『竹取物語(全)』角川ソフィア文庫(2001年9月)には、およそ30年ごとに噴火したと書いてある。
富士山の噴火史-Wikipediaには、以下のような噴火があったと説明されている。
781年 (天応元年)噴火
800年〜802年(延暦19年)延暦大噴火
802年(延暦21年)1月8日 この噴火により相模国足柄路が一次閉鎖。
864年(貞観6年)貞観大噴火 青木ヶ原溶岩を形成した噴火。
999年 (長保元年)噴火
1033年初頭 (長元5年末)噴火
1083年 (永保3年)噴火
『竹取物語』の最後が、「その煙、いまだ雲の中へ立ちのぼるとぞ、いひ伝へたる」で締めくくられているのは、富士山の火山としての活動を物語っていよう。
現在の桜島のように、折に触れ、噴煙を上げていたのではないか。
1707年の宝永大噴火以後大きな噴火を経験していない現状は、平穏な時代というべきであろう。
しかし、貞観大噴火、宝永大噴火等の示すように、大規模な地震と連動して大噴火が起きている。
東北太平洋沖地震(東日本大震災)を経験したからには、油断はできない。
⇒2013年7月24日 (水):大噴火の前兆は捉えられるか?/富士山アラカルト(2)
富士市には、『竹取物語』と若干異なるかぐや姫伝説がある。
白隠禅師の「無量寿禅寺草創記」(1718年)は、「寺は雲門と名づく、赫夜姫(かぐやひめ)の誕育の跡なり、竹取翁の居所なり」と始まる。
かぐや姫は天子の求婚を振り切るために、岩窟に隠れ、コノシロと綿の実を焼いて、死を選んだと思わせ、その後、かぐや姫は富士山頂の岩窟に身を隠す。
いつしか、人々はかぐや姫のことを「浅間の大神として敬い、富士山のご神体であると思うようになった。
⇒かぐや姫伝説
富士山が古くから信仰の対象となってきたことは世界文化遺産の登録が、「信仰の対象と芸術の源泉」となっていることでも示される。
その信仰は、「かぐや姫」の伝承と深い係わりがあった。
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