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2014年1月25日 (土)

安倍首相の施政方針演説批判/アベノミクスの危うさ(25)

第186回国会が24日に開会した。
安倍首相の施政方針演説は、次のような構成であった。
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement2/20140124siseihousin.html

一 はじめに
二 創造と可能性の地・東北
三 経済の好循環
四 社会保障の強化
五 あらゆる人にチャンスをつくる
六 オープンな世界で日本の可能性を生かす
七 イノベーションによって新たな可能性を創り出す
八 地方が持つ大いなる可能性を開花させる
九 安心を取り戻す
十 積極的平和主義
十一 地球儀を俯瞰する視点でのトップ外交
十二 おわりに

目配りの利いたというか総花的なというか、盛沢山であるが首相の施政方針演説とはこのようなものであろう。
どこに力点があると考えられるか。
首相応援団とも言われる産経新聞は、次のように紹介している。

 安倍晋三首相は、第1次政権から取り組む「安倍カラー」の1つである教育再生に強い意欲を見せた。「学力の保障」「道徳」「英語力」を柱とする施策強化を訴え、将来の日本を支える次世代教育に注力する。
・・・・・・
 演説では、国際的な学力調査で、改正教育基本法の下で全国学力テストを受けてきた世代が過去最高の成績を収めたことを踏まえ、「やれば、できる」と強調した。英語が苦手とされてきた日本の国民性を変える英語教育の抜本改革にも着手する方針だ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140124/plc14012421570037-n1.htm

私も教育は重要課題であると考える。
しかし、その内容はいささか疑問である。
「やれば、できる」は、「八 地方が持つ大いなる可能性を開花させる」の項でも使われていて、首相の好みのフレーズのようである。
しかし、往々にして精神論に陥り、逆に「できないのは、やらないからだ」となりがちであることに気を付けなければならない。

逆に批判的なしんぶん赤旗は、次のように批判している。

 安倍首相は、昨年10月の臨時国会の開会にあたっての所信表明演説でも秘密保護法の制定に一言もふれなかったのに、突然、「国家安全保障会議(日本版NSC)」設置法と一体で秘密保護法を持ち出し、国会内外の反対を押し切り、強行に次ぐ強行で成立させました。国民と国会を軽視するあまりの暴挙に、昨年末には首相自身「説明不足」を認めていたのに、施政方針演説で一言もふれないというのは一体何なのか
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-01-25/2014012501_05_1.html

本件に関しては、同紙=日本共産党の言う通りであろう。
最大のウリであったアベノミクス関連では、次のような言葉がある。

 この国会に問われているのは、「経済の好循環」の実現です。景気回復の実感を、全国津々浦々にまで、皆さん、届けようではありませんか。
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement2/20140124siseihousin.html

昨秋の第185回国会では、「成長戦略実現国会」と位置付けていたが、実体はしんぶん赤旗の言うような「秘密保護法国会」であった。
「経済の好循環国会」もどうなるであろうか?

アベノミクスは、第一の矢である「異次元金融緩和」によって、資金供給量が1年間で46%も増えた。
その効果は、株高・円安となって現れた。
円安で輸入品は値上がりし、結果として下がり続けていた消費者物価は上昇に転じた。
昨年12月24日の月例経済報告関係閣僚会議で、安倍首相は、日本経済はデフレ脱却に向けて着実に前進しているとの認識を示した。

確かに、消費者物価指数は、今のまま行けば今後も上っていくだろう。
しかし、それはいいことなのか?

指数の動向を見よう。
物価指数には、消費者物価指数とGDPデフレーターがある。

デフレ脱却へ向け「2年で2%上昇」の物価目標を掲げる日銀。採用する指標は、家計の実感に近い物価動向を示すCPIだ。国内の幅広い品目の価格動向を調べ変化を指数化して表す。生鮮食品を除いた総合指数で、7月には前年同月比0.7%増と2008年11月の1.0%以来の高さとなった。ガソリン価格や電気代など円安によるコスト上昇が効いている。
 これに対して、GDPデフレーターは計算方法が異なる。GDPが「内需」と「輸出」の合計金額から「輸入」金額を引いて計算するのと同様に、GDPデフレーターも「国内物価」と「輸出物価」指数の合計から「輸入物価」指数を引いて出す。
 つまり原油高など輸入物価の上昇は、CPIとは逆にGDPデフレーターの下落要因になる。輸入物価上昇に伴うデフレーターの下落は、輸入物価の上昇分を国内物価と輸出物価に全て転嫁しなければ解消しない。
Photo_2
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO59432940X00C13A9SHA000/

円安によって、輸出物価を輸入物価で割った比率である交易条件は悪化している。

日本の交易条件はこの10年低下傾向が続くが、似た貿易構造を持つドイツはほぼ横ばいを維持する。Photo_3
同上

日本の実体経済は決して良くなっていないのである。
⇒2014年1月 9日 (木):金融緩和で実体経済に資金は回っているか/アベノミクスの危うさ(24)
経済の好循環は、「やれば、できる」というものではないだろう。

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