三角縁神獣鏡の3Dプリントによる“魔鏡”の確認/やまとの謎(92)
三角縁神獣鏡の3Dプリンターによるレプリカが、“魔鏡”であることが確認されたというニュースで賑わっている。
京都国立博物館(京都市東山区)は29日、古代の三角縁神獣鏡の鏡面に太陽光をあてると、その反射光に鏡の背面の文様が投影されることを初めて確認した、と発表した。鏡面の微妙な凹凸によって像が結ばれる「魔鏡」と同じ原理で、最新技術の3Dプリンターで精巧なレプリカを作って実験した。古代の鏡は祭器とされながら、具体的な使用法などは分かっておらず、「その役目を考える上で、貴重な材料となる」としている。
http://kyoto-np.co.jp/top/article/20140129000166
三角縁神獣鏡は、銅鏡の縁部の断面が三角形状となった大型の神獣鏡で、古墳時代前期の古墳から多数出土している。
いわゆる『魏志倭人伝』の中に、「卑弥呼が魏の皇帝から銅鏡100枚を貰った」という文章があり、「卑弥呼の鏡」と解すべきか否かが争われている。
鏡が国産ならば、「三角縁神獣鏡=卑弥呼の鏡」という仮説は崩れるだろうし、魏産ならば、「三角縁神獣鏡=卑弥呼の鏡」をサポートする有力な材料になる。
⇒2008年2月17日 (日):判読と解読
三角縁神獣鏡が、卑弥呼が中国から贈られた鏡である、という前提に立って同笵鏡理論によって古代史の枠組みを考えたのが京大考古学教室の小林行雄氏である。
同笵鏡理論は大きな影響力を持ち、邪馬台国畿内説の重要な支柱にもなっていた。
⇒2008年12月 2日 (火):邪馬台国に憑かれた人…③小林行雄と「同笵鏡」論
それに対して、三角縁神獣鏡が国内からはすでに500枚以上出土しているのに対し、中国では1枚も見つかっていないのはいかにも不自然である。
その点から、「三角縁神獣鏡=卑弥呼の鏡」に疑問を投げかけたのが、森浩一氏である。
⇒2013年8月10日 (土):パラダイムに捉われない古代史家・森浩一さん/追悼(32)
今回のレプリカ制作の元になった三角縁神獣鏡は、愛知県犬山市の東之宮古墳から出土した3世紀の神獣鏡のうちの2面である。
発掘された実物の多くははさびついてほとんど光を反射せず、磨くこともできない。
東之宮古墳出土のものは比較的保存状態がよく、京都国立博物館の村上隆学芸部長がこれにレーザー光線を当てて、形を精密に計測し複製した。
鏡の断面の最も厚い部分は約23ミリ、薄い部分は約0.8ミリと差が激しい。
レプリカの鏡面を研磨していくと、レリーフの厚みに沿って見た目は分からない微妙な凹凸ができ、太陽光を当てると、その凹凸で光が集約・散乱し、反射光の中に背面の文様をぼんやりと映し出した。
■銅鏡に詳しい大手前大総合文化学部の森下章司准教授(考古学)の話
これまでの銅鏡研究が鏡の背面に注目するなか、最新技術で新しい切り口を生み出した。同じ古墳から数十枚が出土することもあるが、これらをいっぺんに並べて像を浮かべたのでは、などの想像も膨らむ。今後、古代の祭祀(さいし)における鏡の役割を考え直すことになる可能性もある。
■京都大人文科学研究所の岡村秀典教授(中国考古学)の話
中国ではかねて「透光鏡(とうこうきょう)」と呼ばれる魔鏡の存在が知られていた。7世紀初めの隋時代の文献も、太陽光を鏡面にあてると裏の文様が映る鏡について言及している。三角縁神獣鏡にも魔鏡のような性質があると予想されてはいたが、最新技術による復元鏡を使って調べる方法はとても新鮮だ。ただ、これによって鏡をどこで製作したかなどの疑問に解答が得られたわけではない。今後、日本で作られたことがはっきりしている他の鏡でも同様の性質があるか調べ、比較する必要があるだろう。
http://digital.asahi.com/articles/ASG1X7KN6G1XPLZB01K.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG1X7KN6G1XPLZB01K
最先端技術によって、古代の技術が再生されたことにより、魔鏡のような機能が確認された。
しかし、それをどう解釈するかは今後の問題であろう。
森下章司大手前大准教授(考古学)は「割れる危険性があるのに三角縁神獣鏡はなぜこれほど薄いのか、ずっと不思議だった。どれも薄い部分は厚さが基本的に1ミリ程度で、多くが魔鏡だった可能性がある」と話す。兵庫県立考古博物館の石野博信館長は「目の前に輝く日輪が現れ、人々はさぞ驚いただろう。女王卑弥呼のカリスマ性を高め、内乱が続く倭国をまとめるための演出に利用したのでは」と推測した。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140129/wlf14012922440026-n1.htm
当時の造鏡技術には驚くが、安易に「三角縁神獣鏡=卑弥呼の鏡」と考えると、ミスリードする可能性があるのではないか。
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