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2013年12月21日 (土)

徳洲会とリクルート/「同じ」と「違う」(65)

徳洲会からの資金提供問題で、猪瀬東京都知事が辞職した。
現時点では、猪瀬氏の個人的な借入という説明であるが、それを額面通りに受け止めている人は皆無だろう。
さしあたっては選挙資金のため提供を受けたことの公職選挙法あるいは政治資金規正法違反が問われることになろう。
しかし、猪瀬氏の都議会における狼狽振りは尋常ではない印象である。
あるいは、何かに怯えてでもいるかのようであった。
背後に、より大きなものがあり、それを隠そうとしているのではないか?

徳洲会は、医療法人徳洲会を中心とし、66の病院をはじめとして総数280以上の医療施設を経営する日本最大の医療グループである。
創設者は医師で衆議院議員も務めた徳田虎雄氏で、医療法人徳洲会は、東京都千代田区に東京本部、大阪府大阪市に大阪本部を置いている。
グループ法人として、一般社団法人徳洲会(千代田区)などがある。
巨大な(企業)グループといえよう。

私は猪瀬氏をめぐる報道に接していて、リクルート事件のことを思い浮かべた。
リクルート事件とは、世界大百科事典 第2版の解説によれば以下の通りである。

情報関連企業のリクルート社が,株式譲渡の形で政・官・財界要人に巨額の贈賄を行った大疑獄事件で,1988年(昭和63)に発覚した。リクルート社は1984年12月,子会社のリクルートコスモス社の未公開株約125万株を79名に,86年7‐9月には同76万株を65名に譲渡し,同株の店頭公開(1986年10月)直後の値上がりにより受領者側が合計66億7000万円の利益を得たとされ,その額はロッキード疑獄(ロッキード事件)の3倍にのぼる。

リクルート(株式会社リクルートホールディングス)は、広告を主体にした、出版およびインターネットにおける情報サービス、人材紹介、教育など多方面に事業を手掛ける企業である。
故江副浩正氏が、1960年、大学が発行する新聞の広告代理店「大学新聞広告社」として創業した。
非上場として、サントリー、竹中工務店などに並ぶ大手企業であり、独特の企業文化で知られる。
リクルートOBが多数活躍していることから、人材輩出企業としても有名である。
リクルート事件はともかくとして、と言うか、にもかかわらずと言うかは別として、リクルートの企業文化は高く評価されることが多く、江副氏もカリスマ性を保っていた。

私が学生時代には、『企業への招待』という会社案内があった。
いわゆるリクルートブックであるが、企業広報誌と求人広告を合体させ編集したもので、就職を考える学生には便利なものだった。
今風にいえば、新しいビジネスモデルの創出ということになろう。
その本質は、情報による需要と供給のマッチングであり、フリー(無料)ビジネスの一種とも考えられる。
企業広告で基盤を確立して、不動産、旅行、転職情報などに多角化していった。

しかし、新興企業であることで、経団連に加入しているような既存の大企業からは距離を置いて見られた。
財界で孤立していたことが、政界を初めとして様々な業界とのパイプを築こうという狙いになり、リクルート事件に繋がった。
伝統的な大企業の社会が新興の企業を潰したという一面もあるのではないかと思う。

そういうところが、徳洲会と似ているようにも感じられる。
医学界というのは、古い権威主義のまかり通っている世界であろう。
60年代末から70年代初頭にかけての全共闘運動の発端は、東大医学部のインターン廃止などを求めた青医連運動にあった。
インターンや登録医などの名前で研修医という制度があったが、身分の保障がなく劣悪な労働条件を甘受せざるを得ない状況に、青年医学徒が異議申し立てを行ったのである。

東大の安田講堂を封鎖した防衛隊長(学生側の責任者)は、沼津出身の今井澄氏だった。
今井氏は、諏訪中央病院の院長等を経て、参議院議員になったが任期中に亡くなった。
今井氏によると言われている「最後の時計台放送」は有名である。

我々の闘いは勝利だった。全国の学生、市民、労働者の皆さん、我々の闘いは決して終わったのではなく、我々に代わって闘う同志の諸君が、再び解放講堂から時計台放送を真に再開する日まで、一時この放送を中止します
今井澄-Wikipedia

徳洲会創立者の徳田虎雄氏は、24時間年中無休の理念を掲げて各地の医師会と対立した。
そのため、政界入りをし、全国各地で66の病院や、200を超える診療所や医療施設を運営するまでに拡大した。
さまざまな批判はあるだろうが、「生命だけは平等だ」「生命を安心して預けられる病院」「健康と生活を守る病院」「ミカン1個も貰わない(「お礼」として金品の授受を受け付けない)」などのモットーは、率直に共感できる。
現時点でも、「ミカン1個も貰わない」と言い切れる医師や医療機関がどれくらいいるだろうか?

徳洲会マネーは、意外なところにも及んでいるかもしれない。
その根本的な要因は、既得権益を守ろうとする医学界の構造にあるのではなかろうか。

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