猪瀬氏の辞職の背後にあるもの/花づな列島復興のためのメモ(286)
猪瀬氏が辞職して、報道もすっかり都知事選モードに切り替わっているかのようである。
しかし、猪瀬氏が粘るように見えていたにもかかわらず、一転して辞職を決意せざるを得なかった背景は何か?
東京地検が鋭意捜査を進めるであろうが、「疑いがある」だけでは立件できない。
ここでは挙証責任の無い週刊誌情報を参照しよう。
「週刊現代2014年1月4・11日号」に『あの猪瀬が辞任してまで「隠したかったこと」』という記事が載っている。
猪瀬氏が辞任する前日、石原慎太郎前知事が安倍首相と官邸で昼食を兼ねて会談し、辞任が決まったという。
いわゆる「ボス交」ということだろう。
それでは、「ボス交」の当事者たちの利害はどうなのか?
石原氏は、「引導を渡したのはボクじゃない」と言っているが、この辺りで引導を渡さなければならない必然性があったという。
石原氏はかねてより徳洲会と繋がりが深かった。
百条委が設置されれば、徳洲会と石原氏の繋がりに波及することは必定である。
徳洲会と石原氏のパイプの後継は、長男の伸晃氏であり、伸晃氏に飛び火することにもなる。
それを避けるためには引導を渡さざるを得なかった。
一方、安倍首相にとってはどうか?
徳洲会マネーは自民党議員の多数にも渡っている。
安倍首相側近の甘利経産相、森少子化担当相、根元復興相などが、パーティ券でお世話になっている。
長引けば政権にも飛び火する可能性がある。
早期の幕引きを図った。
辞任に至った経緯・背景は以上の通りであるとされるが、辞任で幕が引かれたかというとそうではないというのが、同誌の見立てである。
地検特捜部は徳洲会の元専務理事が持ち込んだ膨大な資料をもとに、1年以上捜査を進めているという。
元専務理事の名前は明らかにされていないが、能宗(のうそう)克行氏と見られる。
同氏は、12月3日、警視庁などに業務上横領容疑で逮捕されている。
“金庫番”として長年にわたり徳洲会を支えてきた人物として知られるが、組織の内紛で失脚した。
2013年1月に徳洲会内での懲罰委員会にかけられたが、その際の反論書に、政界にばらまいた“徳洲会マネー”の全容について、83ページにわたって詳細に暴露していたという。
石原氏の名前は早い段階から捜査関係者の間で挙がっていたという。検察関係者がこう明かす。
「能宗氏が徳田氏の告発について最初にある大物検察OBに相談にいったのが約2年前。能宗氏はこの時、石原氏や亀井静香氏の名前を挙げていたようです。13年1月に猪瀬氏の5千万円の話が出てきたことで、この検察OBが別の弁護士を通じて特捜部に持ち込んだといいます」
猪瀬氏と近い人物は、18日に行われた石原氏と安倍首相らとの昼食会について、こんな見方を示した。
「あのタイミングで安倍首相と会食し“引導役”を引き受けたことは、石原氏の処世術の巧みさを感じる。検察の“ターゲット”にならないよう、政権との親密さをアピールする意味もあったのではないか。5千万円を返しにいった猪瀬氏の特別秘書は、元は石原氏の秘書。猪瀬氏が百条委員会にかけられれば、石原都政時代のことも追及される危険がありましたからね」
http://dot.asahi.com/news/politics/2013122400057.html
さらに背景にある“構図”について、「週刊現代」誌は次のように書いている。
カジノ利権に関する問題がある。
猪瀬氏は、カジノ推進派として知られる。
しかしカジノサークルの本丸は、猪瀬氏ではなく自民党である。
百条委が開かれれば、猪瀬氏はカジノ問題についても証言せざるを得なくなり、場合によっては国政崩壊という事態も予想される。
猪瀬氏も、このような事態を考えると辞任するしかなかった。
カジノ問題については、東京新聞、西日本新聞等で連載中の大沢在昌氏の『雨の狩人』でも取り上げられている。
大沢氏は、裏社会がカジノ利権に手を伸ばそうとして画策する様子を描いている。
アングラマネーのロンダリング等で、さまざまなメリットがあるのだろう。
私は海外のリゾート地で、小遣い程度の遊びしか経験がないが。
週刊誌の記事であるから、どこまで事実かは不明である。
しかし、上記記事は、百条委だったら相当部分が明らかにされたような想定で書かれている。
地検特捜部が都議会以下では、鼎の軽重を問われることになる。
このところ敗北が目立つ特捜部の意地と名誉にかけて切り込んでもらいたいものだ。
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