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2013年12月14日 (土)

北朝鮮、張成沢氏の死刑執行/世界史の動向(6)

北朝鮮の朝鮮中央通信は12月13日、党からの除名を報道していた張成沢・前国防委員会副委員長に対し、国家転覆陰謀行為の罪で前日に特別軍事裁判を開いて死刑判決を下し、即日執行したと伝えた。
なんという慌ただしさだろう。
このブログで、失脚したようだ、と書いてからわずか10日足らずである。
⇒⇒2013年12月 5日 (木):張成沢北朝鮮国防委副委員長失脚か?/世界史の動向(4)
⇒2013年12月10日 (火):北朝鮮における政変の意味/世界史の動向(5)

再審の余地もないということは、軍事国家特有ということだろう。
しかし、21世紀の今、こんなことが行われようとは。
想定を超えていたことは私だけではないようで、各国も一様に、憂慮しつつ推移を注意深くウオッチしているようだ。

韓国政府は13日午前7時半から国家安保政策調整会議を開き、協議した。終了後、統一省報道官は「一連の事態を深く憂慮しながら鋭意注視している。今後もすべての可能性に備え、万全を期す」とし、関係国と緊密に協力していく方針を明らかにした。
・・・・・・
米国務省のハーフ副報道官は12日(日本時間13日午前)、「(死刑が)本当だとすれば、北朝鮮の体制が極度に残酷であることを新たに示した」との談話を発表した。米政府も情勢の分析を急いでいる。
 ブッシュ政権時代に対北朝鮮政策に携わったジョージタウン大のビクター・チャ教授はCNNテレビに「これほど恐ろしく劇的なことは、金日成(キムイルソン)主席が権力を固めようとしていた1950年代以来だ」と指摘。

http://www.asahi.com/articles/TKY201312130003.html

事実上のナンバー2とみられていた人物がこのように慌ただしく処刑される背景に何があるのか?
朝鮮中央通信によると、クーデターを企てたというのが張氏の罪状のようだ。

朝鮮民主主義人民共和国国家安全保衛部特別軍事裁判所は、被告人・張成沢が敵と思想的に同調して、わが共和国の人民主権を覆す目的で敢行した国家転覆陰謀行為が共和国刑法第60条に該当する犯罪を構成するということを確証し、凶悪な政治的野心家、陰謀家であり、万古逆賊である張成沢を革命の名のもとに、人民の名のもとに峻烈に断罪・糾弾し、共和国刑法第60条によって死刑に処することと判決を下した。
判決は即時執行された。

http://www.huffingtonpost.jp/2013/12/12/north-korea-jang-execution_n_4436402.html

その上、「凶悪な政治的野心家、陰謀家」「犬畜生にも劣る醜悪な人間のゴミ」などの言葉を使って張氏を非難している。
文化大革命時を想起させる共産主義者によくある陳腐なレトリックとも考えられるが、文化大革命よりもずっと素早い動きである。
それだけ危機の認識が深刻であったということだろう。

さらに、張氏が「外部世界に『改革家』と認識された自分を利用しようとした」とし、北朝鮮に「改革・開放政策」を迫る中国との関係を問題視している。
また、「一定の時期になり経済が落ち込み、国家が崩壊直前に至る」ことを張氏は事前に想定し、その時に首相になろうとしていたとし、経済運営が危機的状況にあることを明らかにしている。

張氏は、アントニオ猪木参院議員が11月に訪朝した時に会談した相手でもある。
同氏は、「よく分からない。北朝鮮も神経質になっているときなので余計なことを話さず、言葉を控えたい」と語っている。
周辺の反対を押し切って訪朝したのは何だったのか?
張氏は、中国だけでなく、日本とのパイプ役だったというが、パイプの先は同議員ということであろうか?

張氏排除こそがクーデターという見方もある。
穏健派の張氏の影響力を除去する強硬派が、金正恩第一書記が叔父の穏健派の張氏を生かしたままにすることを懸念して仕掛けたとするものである。
日本の将来に対してもなかなか明るいシナリオは想定できないが、現実の恐怖国家に生まれなくて良かったとは思う。

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