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2013年12月 8日 (日)

大本営発表は都合の悪い事実を隠す/花づな列島復興のためのメモ(279)

今日(12月8日)の東京新聞の「東京歌壇」欄の佐佐木幸綱選に次の歌が入選していた。

音もなく逆巻く「特定秘密保護法案」釣瓶落しの時を狙いて

作者は、東京都東村山市 小野かほる氏で、佐佐木評は以下のようである。

何やら大急ぎで慌ててこの法を通そうとした政府自民党。下句、異常な急ぎぐあいを比喩して的確。

72年前、1941年の今日、ハワイ時間では7日、休日である日曜日を狙って真珠湾攻撃-ハワイオアフ島真珠湾にあったアメリカ海軍太平洋艦隊と基地に対して、日本海軍が航空攻撃および潜航艇攻撃を行った。
攻撃に加わり戦死した9人が二階級特進し、「九軍神」として顕彰されたが、顕彰する配慮から戦死は撃沈されたのではなく自沈であり、空中攻撃隊の800キロ爆弾で撃沈された戦艦アリゾナは特殊潜航艇により撃沈された、という大本営発表が行われた。
また、座礁した艇から艇長の酒巻和男海軍少尉が脱出して漂流中に捕虜となった公表されなかった。

特定秘密保護法によって容易に想定されるのが、行政機関が都合の悪い情報を隠蔽するであろうことである。
特に極限状況に近い場合ほど、都合の悪い情報は隠蔽され、デマ情報が独り歩きすることになる。
私が修士課程を終えようとする頃は、全共闘運動の盛期で各大学で封鎖と称することが行われていた。

「狂気の3日間」と呼ばれることになる事件が起きた。
騒然としたキャンパスに、東大・日大全共闘が京都にやってきて大学を封鎖するというウワサが流れた。
それを阻止しようということで、逆バリケードが築かれ、一般学生がそれに同調したのである。
2泊3日続いたことから「狂気の3日間」と言うのだが、コトの実態を知った学生は正気に戻り、「3日間」の意味を真剣に考えようとした。
情報が遮断されることの恐ろしさを垣間見た思いがする。

あるいは原爆投下の報道である。
1945年8月6日午前8時15分に、アメリカ軍が広島市に対して原子爆弾を投下した。
大本営は政府首脳にも情報を伝え、午後早くには「広島に原子爆弾が投下された可能性がある」との結論が出された。
しかし、大本営は翌7日15時30分に、次のような報道発表をした。
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広島市への原子爆弾投下-Wikipedia

新型爆弾が原子爆弾であることが分かれば、国民の戦意が喪失すると考えたのであろう。
各紙も8月8日には広島が大きな被害を受けたことを1面トップで報じたが、大本営発表に沿って、「新型爆弾」と表記した。
一方で、アメリカ軍機から撒布されたリーフレットには、原子爆弾であることが記されていた。

広島や長崎を襲った爆弾の正体が原爆であると確認した軍部は、緘口令を諦めて報道統制を解除した。
その結果、11日から12日にかけて新聞各紙は広島に特派員を派遣し、広島を全滅させた新型爆弾の正体が原爆であると読者に明かした。

原爆に限らず、戦時において、報道はさまざまに制約されていた。
いわゆる「大本営発表」が真実と次第に乖離したものになっていった。
Wikipedia は、次のように説明されている。

大本営発表(だいほんえいはっぴょう)とは、大東亜戦争(太平洋戦争)において、日本の大本営の陸軍部及び海軍部が行った、戦況などに関する公式発表のことである。
当初はほぼ現実通りの発表を行っていたが、一般的にはミッドウェー海戦の頃から損害矮小化発表が目立ちはじめ、不適切な言い換えが行われるようになり、敗戦直前には勝敗が正反対の発表すら恒常的に行ったことから、現在では「内容を全く信用できない虚飾的な公式発表」の代名詞になっている。しかし現実の大本営発表は、戦果の誇張や一部言い回しはあるものの大筋の戦況は正しく発表されている。

情報優位側は、自分に都合の悪い情報は隠蔽し、場合によってはデマ情報を流してでも世論を誘導しようとする。
1大学の「3日間」にさえ、それはあった。

福島県鮫川村に、放射性物質に汚染された草木や稲わらを焼却して容積を減らす国内初の「焼却減容化施設」が本格運転を開始したのは、8月19日のことであった。
運転開始して間もない8月29日午後2時半ごろ、爆発事故が起きた。
環境省(大本営)発表は、「爆発は焼却炉から灰を取り出すためのコンベヤーで起こり、コンベヤーを覆う囲いの一部が破損。けが人はなく、焼却灰そのものは飛散していない」であった。
しかし、ならばなぜ実態を隠そうとするのであろうか?
131206
東京新聞12月6日

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