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2013年12月25日 (水)

大学の利益ランキング?/花づな列島復興のためのメモ(285)

2012年度に大学が稼いだ利益のランキングが発表された。
12月22日の日本経済新聞は、1面トップで報じている。
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しかし、このトップニュースにはどんなニュースバリューがあるのだろうか?
そもそも、 国立大学の「利益」とは何だろうか?
同紙による解説を見てみよう。

国立大と私立大では収支構造が異なる点に注意が必要だ。国立大で売上高に当たるのが「経常収益」。国からの交付金が収入全体の3~4割を占め、入学金や授業料は1割程度。意外に大きいのが付属病院の収益で2~3割のケースが多い。収入から教職員の人件費などを引いたのが経常利益。資産除却損など臨時損益を加えた「当期総利益(損失)」が企業の純利益に当たる。
 国立大は基本的に収支が均衡するように予算は組まれるが、コスト削減で利益が増えたり、施設の再開発で損失が出たりする。東京大学の2012年度決算をみると交付金に次いで付属病院収益が大きく安定収入源となっている。

http://www.nikkei.com/article/DGXNZO64457870S3A221C1NN1000/?nbm=DGXNASGD1208H_X11C13A2MM8000

「国立大は基本的に収支が均衡するように予算は組まれる」とすれば、利益は予算外のことである。
「コスト削減」だとか「施設の再開発」などの要因が、予算と乖離すると利益が増減することになる。
つまり、国立大学の「利益ランキング」というのは、予算からの乖離度ランキングである。
そんなものに意味があるのか?

そもそも、大学の本質は、などと改めて問わなくても上記の解説だけで、無意味さは十分であろう。
しかし、日本経済新聞が1面のトップで「東大が首位」と報じれば、読者を「やっぱり東大は違う。利益という面でもトップなのか」とミスリードする可能性がある。
東大はスゴイなぁ・・・

同紙は、弁解のように記事の末尾の方で次のように書いている。

大学は稼ぐことが目的ではない。だが経営力が高いほど教育・研究施設の充実に向けた投資もしやすくなり、大学の魅力度向上につながる。

上記の文章は、「経営力が高い」=「利益が高い」と解さない限り、解説としては意味をなさない。
しかし、上記のように、国立大学の場合、「利益が高い」=「予算からの乖離度が高い」ということであって、経営力という意味では、むしろ問題ではないか。

つまり、利益度ランキングの解説がいつの間にか、経営力ランキングとも読まないと意味がないようになってしまっており、しかも経営力の概念規定自身が疑問と言うべきなのだ。
あるいは、私立大学についてはある程度「経営力が高いほど教育・研究施設の充実に向けた投資もしやすくな」る、と言えるかもしれない。
しかし、大見出しは「国立大の利益 東大首位」である。
支離滅裂で論理破綻した記事であると考えざるを得ない。

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