秘密法案の審議で参院の存在意義を示せ/花づな列島復興のためのメモ(275)
現在、参議院が「良識の府」などと思っている人はほとんどいないであろう。
かつての「緑風会」のように、政党の枠組みとは一線を画した矜持が、参議院の議員にはあった。
いまや衆議院議員とまったく無差別である。
それでも、衆議院と参議院で多数政党の構成が異なる場合は、衆議院決定が優先されることがあるにしても、参議院が一定のチェック機能を果たした。
いわゆる「ねじれ」の意義である。
ところが、7月の参議院選挙の結果として、自民党が圧倒的な第1党になった。
⇒2013年7月21日 (日):衆参のねじれが解消されて参院の存在意義は?/花づな列島復興のためのメモ(247)
国民の選択ではあるが、本当に今のような状態でいいのだろうか?
自公が政権与党を構成している。
公明党の立党の精神として、、「大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく」が掲げられている。
この言葉を心底から信じている公明党の国会議員がいるであろうか?
「維新」や「みんな」は、特定秘密保護法案で自民党にすり寄る姿勢を隠そうともしない。
わずかに存在する批判者に対しては、処分も辞さずの構えである。
かくして、自・公・維・みという翼賛体制である。
民主党は、せっかく政権交代を果たしながら、拙劣な政権運営で政治に対する国民の期待を根底から失わしめた。
翼賛体制成立の第一の責任は民主党にあると言える。
特に、福島原発事故の対応において、決定的な汚点を残した。
「パニックにならないように」という理由で情報隠蔽を重ねてきたことが、特定秘密保護法案に反対する行動を縛っている。
⇒2011年7月 5日 (火):官邸は誰の責任で情報を隠蔽したか?/原発事故の真相(4)
⇒2011年8月20日 (土):菅批判を始めた松本健一内閣官房参与
⇒2012年10月 5日 (金):隠されていた(?)双葉町の高線量/原発事故の真相(48)
⇒2013年11月 1日 (金):秘密保護法案と知る権利/花づな列島復興のためのメモ(270)
東日本大震災が民主党政権時代に発生したことは、不幸なことであったといえよう。
特に、なまじ理工系の大学出身である菅元首相は、原発事故についても半可通的な対応に陥った。
その菅氏は、自身のブログで、「みのもんた氏は東電と安倍首相を批判し失脚した」と見当違いな(?)陰謀説を披瀝し、話題になっている。
菅氏は、「私はみのもんた氏の息子の事件に関しては、マスコミ報道以上のことは知らない」とした上での発言であり、論拠薄弱な一種の妄想なようなものであろう。
菅氏の言い分は、みの氏が汚染水問題などで東京電力と安倍首相を批判していたことから、「原子力ムラ」に陰謀を仕掛けられ失脚した」ということであるが、みの氏の批判が「原子力ムラ」の脅威になるほどのものだったのか。
私には、床屋政談程度のようにしか感じられなかったが。
社民党には、55年体制の時の社会党のような勢力基盤もなければ、人材もいない。
⇒2010年8月 2日 (月):理想と現実との乖離(2)/社民党の場合
⇒2013年11月14日 (木):細川・小泉連携で「山は動く」か?/花づな列島復興のためのメモ(271)
共産党がわずかに存在感を示しているともいえるが、絶対的な少数政党から抜け出ることはあり得ない(だろう、少なくとも近未来においては)。
特に、60年安保前後から、いわゆる新左翼系の学生層と激しく対立してきたことは、歴史的にどう評価されるのであろうか?
⇒2007年10月13日 (土):『されど われらが日々--』
⇒2013年9月 9日 (月):ゼンガクレンという伝説/戦後史断章(13)
意外なような感じがするのが、政策的な一致点が多いのが、生活の党である。
⇒2013年7月21日 (日):衆参のねじれが解消されて参院の存在意義は?/花づな列島復興のためのメモ(247)
⇒2013年7月25日 (木):アイデンティティなき民主党の末期/民主党とは何だったのか(11)
小沢一郎氏には不透明感が拭えないが、いわゆる「陸山会事件」によって、政治生命を事実上大幅に制限された。
この事件の深層(真相)も秘密のままに閉ざされることになるのであろうか?
それにしても、おそらく参議院での審議は“粛々と”進み、特定秘密保護法案は会期中に予定調和の如く成立するであろう。
その結果、参議院不要論が取り沙汰されることにもなるだろう。
私は、参議院に、衆議院とは別の機能を期待したいが故に、残念なことである。
ただ、ノーベル賞受賞者の益川英俊、白川英樹氏らを含む学者が「特定秘密保護法案に反対する学者の会」を結成して、28日に声明を発表したというニュースに注目したい。
声明は「情報の開示は民主的な意思決定の前提で、同法案はこの原則に反する」「与党の政治姿勢は、思想の自由と報道の自由を奪って戦争へと突き進んだ戦前の政府をほうふつとさせる」などと訴え「憲法の定める基本的人権と平和主義を脅かす立法」と結論づけている。
同会には、樋口陽一・東北大名誉教授(憲法学)▽加藤陽子・東京大教授(歴史学)▽姜尚中・聖学院大教授(政治学)▽佐和隆光・京都大名誉教授(経済学)−−ら、さまざまな分野の学者が参加。304人の賛同者が集まっているという。
http://mainichi.jp/select/news/20131129k0000m010094000c.html
ノーベル賞学者の発言といえパグウォッシュ会議のことが想起される。
1957年7月7日、カナダ・ノバスコシア州のパグウォッシュに、湯川秀樹博士や朝永振一郎博士を含む10カ国22人の科学者たちが集まって第1回の会議が開かれ、すべての核兵器は絶対悪であるとされた。
安倍首相の祖父である岸信介首相の時代であったことは、偶然か必然か?
不易流行という言葉がある。
「不易」はいつまでも変わらないこと、「流行」は時代々々に応じて変化すること、と解説されている。
私が考える衆参の棲み分けのイメージは、衆議院は「流行」を反映し、参議院は「不易」を反映する、という感じである。
とすれば、参議院は選挙には馴染まず(折しも7月の参院選について違憲判決が出された)、目先の実利に焦点を合わせている財界人等を含まない(真の)学識経験者等から選出されるべきかも知れない。
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