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2013年11月 9日 (土)

薄幸の昭和の歌姫・島倉千代子さん/追悼(40)

歌手の島倉千代子さんが8日、肝臓がんのため亡くなった。
享年75歳。
1955(昭和30)年、「この世の花」でデビューし、1957(昭和32)年、「東京だョおっ母さん」が大ヒットした。
デビューしたのは私の小学生の時であり、ラジオから流れてくる歌声が原体験のように耳に残っている。

あかく咲く花 青い花
この世に咲く花 数々あれど
涙にぬれて 蕾のまゝに
散るは乙女の 初恋の花

身の回りは皆貧しかった。
後で考えると、わが家は特に貧しかったのだが、そんなことを気にもしなかった。
平成の時代にも活躍していたのだが、この人の歌唱は昭和のものといっていいだろう。

昭和の歌と言えば古賀政男である。
5000曲の歌を作ったと言われているが、いろいろな歌手がカバーしている。
島倉さんもその1人である。
⇒『島倉千代子古賀メロディを唄う  (2003)

私が半年近くの長期入院を余儀なくされた時、知人たちが身体不如意を慮って、片手で操作できるiPodをプレゼントしてくれた。
何人かの人が、それぞれ「これを」と思う曲を入れてくれていた。
その中に、島倉千代子のカバーする古賀メロディがあった。
山中の電波事情も良くない病棟で、iPodは消灯後の貴重な友となった。
ちなみに消灯は21時である。
発症前はしばしば夜更かしもする生活だったので、病院生活に慣れるに従い夜が長すぎた。

島倉さんの歌う古賀メロディは、嫋々としている。
特に西条八十作詞の「誰か故郷を想わざる」などは、心境に訴えた。

花摘む野辺に日は落ちて
みんなで肩を組みながら
唄をうたった帰り道
幼馴染のあの友この友
ああ 誰か故郷を想わざる

彼岸花の咲く頃、亡くなった竹馬の友のことなどが想い浮かんだ。
栗本慎一郎氏の言うように、脳の海馬と昔の仲間の記憶には、何らかの関係があるのかも知れない。
⇒2011年8月 7日 (日):「花背」の思い出と往時渺茫たる長期的記憶の秘密/京都彼方此方(2)

五木寛之さんの小説に、「艶歌」を主題にしているものがある。
馬渕玄三というディレクターをモデルにしたといわれる「艶歌の竜」こと「高円寺竜三」の世界である。
⇒2011年11月16日 (水):『湯の町エレジー』と古賀メロディ/私撰アンソロジー(12)
消灯後の病棟で聴く古賀メロディは、まさに「艶歌」であった。

「艶歌」は<つやうた>と読めば、<みだらな歌。情事に関する歌。猥歌。春歌>ということになるが、五木さんの「艶歌」はそうではない。
デジタル大辞泉の次の解説のような歌である。

明治10年代に、自由民権運動の壮士たちが、その主義主張を歌にして街頭で歌ったもの。のちに政治色が薄くなり、悲恋・心中の人情歌をバイオリン・アコーディオンなどに合わせて歌う遊芸になり、「艶歌」とも書かれるようになった。
日本調流行歌の一。小節(こぶし)をきかせた浪曲風メロディーで二拍子、短調の曲が多く、義理人情を歌う。

島倉さんの歌の思い出は数々あるが、「人生いろいろ」は小泉元首相の語録によっても人口に膾炙した。
2004年に、民主党の岡田克也代用との党首討論での発言である。

人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ。岡田さんの会社だって、みんながみんな同じように働いてるわけじゃないでしょう?

原発推進から脱原発に転じたといわれる小泉氏の面目躍如という感じである。
⇒2013年10月27日 (日):小泉元首相の脱原発論/アベノミクスの危うさ(18)
一般論として言えば「人生いろいろ」というのは、全く正しいだろう。
問題は、個別具体論である。

出身地品川区の京浜急行電鉄青物横丁駅の電車接近メロディに採用されているという。
離婚、借金、ガン・・・
何よりも島倉さんの実人生がまさに「人生いろいろ」だったと言えよう。
数多くのヒット曲に恵まれたが、薄幸という言葉が拭えない感じのする人だった。
合掌。

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