ブラック企業対策にぬかりはないか?/アベノミクスの危うさ(20)
ブラック企業の問題が社会的関心を集めている。
ブラック企業とは、以下のような法人を指す。
Wikipedia-ブラック企業
労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いたり、関係諸法に抵触する可能性がある営業行為や従業員の健康面を無視した極端な長時間労働(サービス残業)を従業員に強いたりする、もしくはパワーハラスメントという心理的、暴力的強制を常套手段としながら本来の業務とは無関係な部分で非合理的負担を与える労働を従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)のことを指す。
ブラックの基準は一義的には決められない。
特に、裁量と強制の関係には、幅広いグレーゾーンが存在する。
あからさまな強制でなくとも、その企業に所属する限り心理的に受ける強制があると思われるが、その線引きには個人差がある。
ハラスメントの問題も同様である。
セクシャル・ハラスメントの問題も、同じ行為であっても日頃好意をもたれているか否かによって、捉え方が異なるのは良くあることであろう。
有名な事例としては、ユニクロなどを展開している株式会社ファーストリテイリングがある。
文藝春秋社が発行している「週刊文春」2010年5月6、13日合併号と書籍『ユニクロ帝国の光と影』において、国内のユニクロの店長や中国の生産工場で働く工員に過酷な長時間労働をさせていると表現したことに対し、名誉を傷付けられたとして同社に損害賠償などを求める裁判を提起した。
株式会社ファーストリテイリングは、柳井正社長の革新的な経営で有名であるが、果たしてどう考えるべきか?
なぜユニクロだけ“ブラック叩き”にあうのか
アベノミクスでは、企業が活動しやすいことが優先されていると言ってよいだろう。
政府は5日の閣議で、特定の地域を指定して医療、教育、農業などの分野で規制緩和を行う国家戦略特区法案を決定した。
特区を安倍政権の経済政策「アベノミクス」の柱である成長戦略の目玉と位置づけており、法案の今国会成立を目指すとしている。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013110500701
結果的に法案には盛り込まれなかったが、雇用規制緩和の導入がなされる予定であった。
特区においては、解雇要件を事前に明確化すれば解雇を自由とするというものである。
しかし、全国一律の雇用ルールを求める厚生労働省が慎重な姿勢を示したことや、解雇が容易になるとして労働組合が強く反対したことなどから、結局、導入を断念したという経緯である。
これは政権の考え方を端的に示していたものといえよう。
また、限定社員制度の導入も検討されているという。
限定社員とは、、仕事の中身や勤務地を予め限定して会社と契約して働く正社員のことである。
すでに類似の制度は、「エリア社員」「地域限定社員」「限定正社員」「エリア総合職」「エリア限定社員」等の名称で、多くの企業が実施している。
いわゆるワーク・ライフ・バランスへの関心の高まりなどを背景に、こういった限定社員・地域限定社員が見直されてきているといわれる。
価値観も多様化し、昇進・昇給を優先することから、家庭と仕事との両立、プライベートの優先などに重きを置く人が増えているという社会背景がある。
従来、個別企業の制度として、そのような要求に対応してきた。
それでは、なぜ新たにこのような制度を導入するのか?
以下にような見方がある。
限定正社員制度の本質は、正社員の賃金を下げ、かつ正社員を『解雇しやすいものにすることである。
例えば、限定した勤務場所を会社の方針で閉鎖なりした場合には、閉鎖のみを理由にして当該労働者を解雇することができるようになり、企業にとっては、今まで以上に都合良く人員削減、人件費削減ができる。
東京新聞11月5日
もちろん、どんな制度にも、プラスの面とマイナスの面とがある。
それは立場により、あるいは価値観により評価が分かれるところであろう。
ファーストリテイリングにしろ、高く評価する人もいれば否定的に考える人もいる。
朝日新聞の天声人語は、公平な目配りが必要なような言い方をしているが、強者と弱者が同じ土俵で戦うことが公平とは言えない。
⇒2013年10月14日 (月):朝日新聞社はどうなっているのか?/ブランド・企業論(3)
特に、セクシャルハラスメントのような問題は、被害者が声を上げにくい。
週刊朝日の編集長やみのもんた氏の「疑惑」が、長年水面下で燻っていたのは、被害側が弱者であるからであろう。
アベノミクスが強者をより強くしようということにのみ目を向けていると、ブラック企業がはびこるのを助長しかねない。
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