脱減反で日本の農業は甦るのか?/花づな列島復興のためのメモ(273)
減反政策が見直されることになった。
与党(自民党・公明党)は11月20日国会内で農業政策担当者の実務者協議を開き、減反補助金を半減することで合意した。
いままで、コメ農家に10アール当たり15,000円を支払ってきたが、来年度から7,500に引き下げるという。
減反政策は、基本的には米の生産を抑制するための政策である。
具体的な方法として、米作農家に作付面積の削減を要求するため、「減反」の名が付いた。
戦後の農地改革により自作農が大量に発生し、食糧管理法(食管法)によって米は政府が全量固定価格で買い上げることなっていたため、農家は意欲的に生産に取り組んできた。
そして農業技術(肥料や農業機械)の進歩によって、生産性(土地および労働)が向上し、生産量が著しく増加した。
一方で、日本国民の食事の欧風化などに伴って、米の消費量は漸減したため、政府が過剰な在庫を抱えることとなり、他方で他の農作物の自給率は100%に達しない状況が続いた。
政府は1970年に、新規の開田禁止、政府米買入限度の設定と自主流通米制度の導入、一定の転作面積の配分を柱とした本格的な米の生産調整を開始した。
そして平成6(1994)年には、食糧管理法が廃止されて食糧法が施行された。
食糧法では、政府の米買入れ目的は価格維持から備蓄に移行して、買入れ数量は大幅に削減した。
米の価格は原則市場取引により形成されるようになり、生産数量は原則生産者(実際は農業協同組合を中心とする生産者団体)が自主的に決定することになった。
稲作は、日本という国家が成立する前から、日本という風土に根差した農作物として栽培されてきた。
このため、減反政策によって、日本の原風景が失われた。
また、水田の農業以外の機能、たとえば保水機能、生態系保全機能等が失われ、伝統的な農業文化も失われてしまった。
これらの評価は難しい。
たとえば、「耕して天に至る」という言葉を思い起こさせるような棚田の風景は、私たちの世代にとってはノスタルジーを覚えるものであるが、生まれた時から都市的生活様式になじんできた人たちにとっては異なるであろう。
『古事記』に、日本は「豊葦原の瑞穂の国」という表現がある。
豊かな広々とした葦原のように、みずみずしく美しい稲穂が実る国という意味だとされる。
河川の氾濫原や湿地などが、米作りに適した土地として、豊かさを象徴する存在であったと思われる
しかし、現実にコメは余っている。
だから、コメが豊作だからといって祝うこともはばかられるようになってしまった。
私自身のことを考えても、身体障害者としては三度の食事もパンの方が食べ易いのが事実である。
そもそも、どう考えても、耕作を放棄した農家に補助金を出すという減反政策というのはおかしいだろう。
どうすればいいか?
農業は太陽と大地と水の産業である。
その土地の気候風土に合わせることが重要であり、農業者の自主性が重要である。
同時に、都市と農村の連携がカギでり、農業者だけの問題ではない。
基本的には、藻谷浩介、NHK広島取材班『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』角川oneテーマ21(2013年7月)などに描かれているように、農業者の創意工夫と消費者の価値意識の問題だと思う。
フィクションではあるが、楡周平『プラチナタウン』祥伝社文庫(2011年7月)を付け加えよう。
金融資本主義の行き詰り・限界がはっきり見えた2011年3月11日以後の社会のあり方が問われている。
⇒2009年1月 2日 (金):人口減少社会の到来とグローバル市場主義モデルの終焉
⇒2011年3月22日 (火):津々浦々の復興に立ち向かう文明史的な構想力を
われわれは、どのような社会を構想し、実現していくのか、根源的に考えなければならない時だろう。
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