「アメリカの時代」の終焉と日米同盟/世界史の動向(2)
私は昔、馬野周二『アメリカ落日の論理 』ダイヤモンド社(1981年12月)という本を読んだことがある。
私にとっては長期の1カ月余のアメリカ出張中のことであり、ホテルの便箋に読後感をメモした。
社内報に読書案内的なコーナーがあったので、それに載せるつもりだったように記憶している。
当時の感想を復元して見ると、大要次のようだった。
馬野氏は、元々は化学工学の研究者・技術者であったが、歴史を数理的な手法で解析した著書で知られる。
化学工学というのは、化学というより機械の一分野であり、原理よりも現象が優先された(ように思う)。
化学装置の中は一種のブラックボックスであるが、インプット(原材料)とアウトプット(製品)の関係をできる限り正確に推測することをミッションとしている(ように思う)。
システム工学は、化学工学から発展した。
⇒2011年6月22日 (水):西村肇さんの放射性物質の放出量の推算/原発事故の真相(1)
馬野氏には『石油危機の幻影』ダイヤモンド社(1980年)などを読んで大いに啓蒙されていた。
『アメリカ落日の論理 』では、実体験を基に日米両国の相対的位置関係の著しい変化と両国の政治経済の将来について、ユニークなシナリオを描いてみせていた。
馬野氏の論点は多方面に及んでいるが、そのロジックの基礎は以下のとおりである。
国家にはそれぞれ固有のライフ・サイクルがあり、その盛衰には必然的な法則性がある。
第1次産業革命以後の工業国家においては、その国力は例えば鉄鋼生産量のシェアを指標として表すことができ、過去のデータを基にロジスティック関数のパラメータを決めることにより、将来の国力関係をかなり高い精度で予測し得ると考えられる。
銑鉄生産量のデータを基にした図は、各国の位置関係が驚くべき的確さで表現されているように思われる。
特に、2国の曲線の交点の近辺に、必ず両国の関係している戦争・争乱が生起している事実については、不気味な程の精度と言って良い。
日米の関係については、石原完爾の世界最終戦争論が有名である。
石原は、古来よりの用兵の進歩と兵器の発達の分析から戦争の形態の将来像を洞察し、1964年から1984年の間に日米間に「世界最終戦」が勃発するであろうことを予言した。
昭和5(1930)年頃のことであるが、日米共に必ずしも世界の大国とは言えない当時においては、極めて特異な見方であった。
実際には1941年に日米は開戦し、日本の敗戦に終わった。
石原の予見は、当たったのか外れたのか?
第2次世界大戦の終結後には「世界最終戦」と呼び得るような戦争は起きていない。
馬野氏の見方は、第2次大戦が時期尚早に勃発したため、世界最終戦の予防効果をもち、ある意味ではそれが日本の全くの壊滅を防いだともいえ、敗戦に終ったことはむしろ好運であったとも考えられる、としている。
ちなみに、馬野氏が描いた銑鉄生産量を基にした国力推移図の交点は1971年である。
偶然かも知れないが、石原の予言の中間点である。
馬野氏によれば、1971年のニクソン・ショック、1973年、1979年のオイル・ショックは、戦争技術の発達により大国間の本格的軍事戦争が不可能になったため、軍事から経済へ形を変えた日米の戦争である。
従って持久戦の形態とならざるをえないが、いずれも、アメリカ・エリートの日本の経済力の破壊を意図した策謀である。
しかし、これらは結果的には、日本の産業構造の高度化、日本工業製品の大量輸出という形でアメリカの意図を裏切った。
アメリカの情報機関が世界の指導者の電話などを傍受していたとされる問題がニュースになっている。
ドイツのメルケル首相などの携帯電話が米国家安全保障局(NSA)に盗聴されていた疑惑である。
ドイツ誌シュピーゲル(電子版)は、NSAが10年以上にわたり、メルケル氏の携帯電話の通信内容を傍受していた可能性があると報じている。
同誌は、NSAの機密データを入手したとし、これによると、メルケル氏が首相に就任する3年前の2002年から、メルケル氏の携帯電話がNSAの監視対象になっていたことが確認された。メルケル氏は02年当時、野党だったキリスト教民主同盟(CDU)の党首を務めていた。
メルケル氏の携帯電話の番号は、オバマ米大統領訪独(今年6月)の数週間前まで、監視対象のリストに載っていたという。
http://news.livedoor.com/article/detail/8196568/
このニュースに接し、アメリカという国には、われわれと基本的な価値観の違いがあると思わざるを得ない。
アメリカの諜報活動は、エシュロンという名で知られている。
「米、英、加、豪、
ニュージーランドの英語圏5カ国で構成される盗聴組織の暗号名。 主に赤道上に配置された商業通信衛星インテルサットの電波を地上 で受信(盗聴)している」といわれている。 しかしマイクロ波などの地上波無線、 短波無線や携帯電話などの電波も盗聴している。
http://www.kamiura.com/abc33.html
ドイツは日本と同じように敗戦国であるから、諜報組織の仲間入りはさせてもらえず、諜報される側である。
事実上の敗戦国であるフランスも同様ということであろう。
安倍首相は、60年安保の一方の主役である岸信介元首相を祖父とする。
であるかどうか分からないが、著しくアメリカ偏重政策をとっている。
特定秘密保護法案が論議の対象になっているが、安全保障分野の機密保護が目的であるとされるが、それは日米同盟の軍事的強化と同義であろう。
経済的には金融資本主義であり、それは日本の伝統とは相容れないことが多い。
TPPの内容もよく分からないが、果たして国益に適うのか?
一般には“保守”といわれる人たちであるが、何を保ち守るのかいささか疑問である。
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