TPP交渉の行方/アベノミクスの危うさ(14)
インドネシア・バリ島で開かれた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に参加する12カ国の首脳会合が8日閉幕した。
年内妥結に向け、「残された困難な課題の解決に取り組む」とする首脳声明を採択したが、具体的な解決策を示すに至らなかった。
安倍晋三首相は、現地で記者団に対し、「交渉の年内妥結に向けた大きな流れができた」と述べたが、目標としていた「大筋合意」と言っていいかどうか。
12カ国が当初目指していた「実質的な作業を終えた」とする文言が盛り込まれなかったことは、「大筋合意」とは言い難いのではないか。
それよりも今後論議になると思われるのは、政府・自民党が、重要5農産物(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)について、関税撤廃の対象にするかどうかを検討する考えを明らかにしたことである。
これまで関税維持を求める「聖域」と位置付けてきている。
昨年末の総選挙でも、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」と訴え、7月の参院選でも政策集に「重要五項目の聖域を確保する」と掲げていたので、公約違反ということになろう。
まあ、公約違反はこの国ではいつものことであり、さほど驚くようなことでもないが。
そもそも、民主党の菅政権以来、「平成の開国」と言ってきたことに、「聖域」があり得るのだろうか?
仮に、死守したい領域をそう呼ぶとしたら、交渉相手に自分の弱点を開示するようなものであろう。
転換の背景に、日本を取り巻く厳しい交渉環境があると言われる。
仮に「重要五項目」を死守すれば、関税の自由化率は93.5%になる。
しかし、回の議長国ニュージーランドは100%の自由化派、次回の議長国になる見通しのシンガポールも100%派で、参加国の中で最も発言力が強い米国も、95%程度を求めているとされる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013100802000110.html
最初から、交渉妥結と「聖域を守る」ことは、両立しないことだったといえよう。
にもかかわらず、自民党が、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」としていたのは、方便ということであろうか?
オリンピック招致のためには、福島原発事故についても、「under control」と実態とかけ離れたことを平然とスピーチするのだから、選挙に勝つためには、ということだったのであろうか?
⇒2013年10月 4日 (金):むしろuncontrolと言うべきでは/原発事故の真相(89)
⇒2013年9月24日 (火):「嘘も方便」首相と日本の将来/花づな列島復興のためのメモ(264)
しかし、各国のスタンスには差異があり、年内妥結となるのかどうか不透明と言った方がいいだろう。
東京新聞10月9日
TPP参加は、アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略にとって重要な柱であろう。
しかし、これから人口減少が本格化する中で、個人的なレベルでも基本的な需要は充足されている。
いかなる「成長」が可能なのか、難しい課題であり、「第3の矢」の内容は明らかではない。
⇒2009年1月 2日 (金):人口減少社会の到来とグローバル市場主義モデルの終焉
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