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2013年10月28日 (月)

競争力強化法案は有効な成長戦略になり得るか/アベノミクスの危うさ(19)

「産業競争力強化法案」を、政府が国会に提出した。
経産省のサイトには次のように書いてある。

本法律案は、20年以上続いた我が国経済の低迷を打破し、力強い経済を取り戻すために策定された「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)に盛り込まれた施策を確実に実行し、日本経済を再生し、産業競争力を強化することを目的としています。
本法律案では、「戦略」を政府一体となって強力に実行するための「実行計画」を策定し、実行すべき制度改革とその実行時期を明らかにして、可能な限りの加速化と深化のための仕組みを創設します。また、本法律案により、産業競争力の強化の観点から、企業の提案に基づく「規制改革」を実行するための新たな特例措置、「産業の新陳代謝」を加速するためのベンチャー支援や事業再編の促進などの措置を講じます。
http://www.meti.go.jp/press/2013/10/20131015001/20131015001.html

安倍首相は、所信表明演説で、この法案がアベノミクスの成長戦略の要になると述べた。
そして、企業ごとに規制を緩和する「企業実証特例制度」の導入や、リストラ、設備投資、雇用を促す1兆円の税制優遇を含む同法案を自画自賛した。
つまり、アベノミクスの第3の矢である「成長戦略」の切り札ということだろう。
果たして、思惑通りの効果を期待できるであろうか?

目玉とされる「企業実証特例制度」は、新たな分野に進出したり、新たな製品を作ったりする場合に、規制を見直す法改正などが経なくても、企業が自ら弊害防止策を講じ、それで十分と判断されれば、規制の適用を免除されるというものである。
例えば、自動車、電気、素材、商社などの企業が医療、福祉、介護、農業といった新たな分野に進出したいと考えた場合、主務大臣(この場合、経済産業大臣)が企業の要望を受けて、関係省庁(この場合、厚生労働省や農林水産省)と交渉する。
企業が自ら行ってきた関係省庁との交渉を、経済産業省が代行してくれるというわけである。

このように、特定官庁を重用して、他省庁に介入させようというのでは政策全体のバランスを崩す危険があるからだ。
ところが、安倍政権では経済産業省の重用が目立つ。
安倍首相が原子力発電所の運転再開や、原発輸出の拡大に熱心なこともその1つの表れではないか。
また、庶民が幅広く負担する消費増税と引き換えに、法人復興税の前倒し廃止も、経済産業省の意向が反映されているだろう。
⇒2013年9月26日 (木):消費税増税のために復興法人税を廃止という怪/アベノミクスの危うさ(12)

そもそも、官僚の作成した「成長戦略」というのが、基本的な矛盾を孕んでいるのではないか。
官僚機構は、政権与党と一体である。
アベノミクスの重心は、経産省重視に見られるように、輸出大企業に偏っていると見受けられる。
⇒2013年7月 2日 (火):円安は良いことか?/アベノミクスの危うさ(9)
⇒2013年10月 2日 (水):消費税増税に大義はあるか?/アベノミクスの危うさ(13)

大企業が成長すれば、それがやがて賃上げ等を通じて、国民一般に浸透するという説明だが、それで果たして需要不足が解消されるのであろうか?
映画化作品が話題になっている福井晴敏『人類資金1』講談社文庫(2013年8月)の次の文章に応えられるであろうか?

バブル崩壊で学んだはずの教訓をよそに、企業は生産性の向上に励んで大量のモノを供給し、需要者なき市場で値崩れを起こしてはデフレだと嘆く。儲からなければ経営の効率化をさらに推し進め、不要と切り捨てられた人材をあぶれさせて、消費環境の悪化に一層の輪をかけもする。まさに己の血を啜って糊口をしのぐかのごとし。とどめとばかりに到来した東日本大震災を含め、日本が歩んできた戦後七十年の絶望的な終着点がここ。否、世界中の先進国が同じサイクルに突入しつつあるという意味では、共産主義の敗退以降、世界が唯一の正義と信じた資本民主主義の行き着いた先がここ。無制限のばらまき政策で失われた二十年を取り戻そうとしたアベノミクスも、国家財政をより深い負債の海に沈める結果に終わりつつあり、投資先を失った大量の預金は再び銀行や箪笥の奥で根腐れするようになった。成長し、発展し続けることによって未来を保証されてきた資本主義社会は、その未来が担保価値を喪失したいま、投資対象ではなり得なくなったとでも言うように。

現在の大企業に革新的な成長を期待することはないものねだりである。
与党は基本的に既得権益を守る立場であり、その打破をに期待するのは間違っているだろう。
「既得権益VS新興勢力」という図式で考えれば、成長の原動力であるイノベーションがどちらの側にあるかは明白である。
革新的な成長を期待するのであれば、それは政権、政策の外から独自に成長する企業に期待するしかないのだ。

安倍首相自身が、臨時国会の所信表明演説で「景気回復の実感は、いまだ全国津々浦々まで届いてはいない」と述べている。
消費税増税前の駆け込み需要とか5兆円規模の経済対策といったカンフル剤の効果は、言ってみれば束の間のことに過ぎない。
「成長とは何か?」という根本的な問いからスタートしなければならないように思う。

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