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2013年10月19日 (土)

消費税増税にみる報道の翼賛化/花づな列島復興のためのメモ(268)

政府が来年4月に、消費税率を現行の5%から8%へ引き上げることにした経緯については、釈然としているわけではないが、“ルール”に則っていると言われれば反論し難い。
⇒2013年9月26日 (木):消費税増税のために復興法人税を廃止という怪/アベノミクスの危うさ(12)

しかし、予定されていたこととはいえ、国民不在の決定という感じは拭えないだろう。
その違和感の1つに、マスメディアがこぞって増税賛成という立場だったことがある。
そんなに挙国一致するほど、対立点がないのだろうか?
少なくとも、増税による景気の悪化をどう考えるかということに関しては、多様な見方があり得るのではないか?

しかし、マスメディアに期待するのは、無いものねだりなのだろう。
特に新聞は、「新聞には軽減税率を適用すべき」などと言っているのだから、批判的な主張など打てるはずもない。
⇒2013年9月10日 (火):新聞界に競争原理は不要なのか?/花づな列島復興のためのメモ(258)
⇒2013年9月13日 (金):何のための消費税増税か?/花づな列島復興のためのメモ(260)

「文藝春秋」11月号の「新聞エンマ帖」というコラムで、この間の事情を「なし崩し翼賛報道」と解説している。
すなわち、最終的な増税決定の局面が、2020年東京オリンピック決定に沸く祝賀ムードのどさくさ紛れに進行したというわけである。
実際、ブエノスアイレスで国際オリンピック委員会(IOC)総会で開催都市に東京が決まったのは、7日(日本時間では8日)のことだった。
そのことを報じ得る9日の朝刊は、業界の談合で一斉に休刊日だったので、新聞で報じられたのは9日の夕刊からだった。
この談合というか、競争意識の無さも如何なものかとは思うが、10日の朝刊からは、オリンピック報道と同期して消費税増税報道が始まった。

10日朝刊
朝日:増税指標クリアと判断/GDP3.8%増、首相、(十月)1日にも決断
日経:消費増税「予定通り」強まる/9月月例報告 景気回復を明記

11日朝刊
産経:消費増税 公算強まる/首相、経済対策で判断
朝日社説:消費増税 法律通り実施すべきだ

12日朝刊
読売:消費税 来年4月8%/首相、意向固める/経済対策に5兆円

朝日の魅力の1つだった批判精神など見る影もない感じである。
⇒2013年10月14日 (月):朝日新聞社はどうなっているのか?/ブランド・企業論(3)
12日の読売の記事が、一連の報道の決定版ともいうべき内容であったと「エンマ帖」子はいう。
そして、政権の進め方の舞台裏を、各紙にも載っている「首相動静」欄にカギが隠れていると、次のように解説する。

10日午後
閣議の前に、麻生、甘利、菅氏と会談。
→増税の内意と経済対策とりまとめ指示

ナベツネ氏らと会食→ナベツネ氏は増税の心証を得る
11日午後
高村副総裁、野田税制調査会長の党側に、予定通りの方針伝達

つまり、読売は「安倍-ナベツネ」会談の感触と自民党サイドの裏も取って12日朝刊の「決定版」を打った。
「エンマ帖」子は、「新聞が政権に協力し、五輪ご祝儀で増税決行を後押ししようと腹を括った」と解説している。
政府が60人の有識者から意見聴取をした時点で、7割は賛成ということが明らかだったから、「増税固める」程度の観測記事は書けるだろう。
それをしなかったのは、「丁寧に広く意見を聞く」という政権の手順を尊重したからで、一貫して、増税への軟着陸に協力したのだ。
翼賛体制の行方が不安である。

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