みずほ銀行の暴力団融資の闇/花づな列島復興のためのメモ(266)
みずほ銀行が暴力団組員らへの融資を放置し、金融庁から業務改善命令を受けた。
巷では、先ごろ放映を終えたTVドラマ『半沢直樹』になぞらえて、「みずほ銀行には半沢直樹のような人材がいないのか」といった声が多いようである。
それにしてもこの事件には現時点では不明な点が多い。
たとえば次のような点である。
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309300707.html
このうち、「情報が担当役員止まりだった」という当初の説明は、10月8日の佐藤康博頭取の記者会見で覆された。
みずほ銀行の佐藤康博頭取は8日、暴力団への融資を放置した問題発覚後、初めて記者会見し、問題融資を銀行として把握した2010年12月、当時頭取だった西堀利氏にも取引実態が報告され、事実を把握していたと発表した。
佐藤頭取は、みずほフィナンシャルグループ(FG)の取締役に就任した2011年7月の取締役会に出席し、暴力団融資問題を「知り得る立場だった」と述べた。
みずほ銀はこれまで、問題を把握していたのは当時の上野徹郎副頭取ら法令順守担当までだったと説明していたが撤回した。金融庁にも当初、この事実を報告しておらず、経営責任が問われるのは必至だ。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131008/crm13100816360016-n1.htm
10月4日にみずほが開いた会見では、岡部俊胤副頭取が「(情報は)担当役員止まり」と強調した。
わずかに4日後、まさに舌の根も乾かぬうちと言えよう。
佐藤頭取自身が複数回にわたって出席した会議で配布された参考資料の中に、オリコとの取引に関して反社会的勢力との取引が分かる形での記載があったという。
配られた資料に記載があったという点で知り得る立場にあったが、認識するまでには至らなかった、という弁明ということになる。
図らずも、反社会的勢力に対する意識の低さを物語るものである。
担当役員止まりではなかったわけで、となると、他の2項目の謎がさらに深くなる。
問題の1つに、提携ローンという仕組みがある。
「提携ローン」は、自動車や家電を買う際に信販会社が審査し、提携する銀行が貸し付けるものである。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013100502000129.html
信販会社の信用情報は、銀行の信用情報より少ないから、審査が甘くなる。
メガバンクの中で「提携ローン」の仕組みを利用しているのは、みずほ銀行だけだという。
とすれば、審査を意図的に甘くして融資の拡大を図ったとしか言いようがないだろう。
バブル期ならともかく、未だにこんな発想なのか、と驚くしかない。
同行は、日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行が合併して誕生した。
この経緯が未だに尾を引いているようにも思える。
問題となった案件は、オリエント・コーポレーション(オリコ)に係わるものだという。
オリコは旧第一勧業銀行の影響力が強く、歴代社長は第一勧銀出身者が務める。
問題の融資が明らかになった2010年12月時点のみずほ銀行の頭取は富士銀行出身で、同行のコンプライアンス(法令順守)を担当する役員は日本興業銀行出身だった。
東京新聞10月9日
旧行意識による風通しの悪さが今も続いているのだろうか?
3行のバランス人事も変わっていないようである。
同行OBで、第一勧業銀行総会屋利益供与事件元にした高杉良の小説およびそれを原作とした映画『金融腐蝕列島』のモデルともなった作家の江上剛氏は、次のように言う。
世界的に見ても金融業界でマフィアや日本の暴力団などの反社会的勢力との関わりを断つ動きが広がる中、提携ローンとはいえ、2年間も関係を放置していたことは認識が甘すぎる。
ましてや取締役会で資料が配られていながら、だれも何も対応を取らなかったというのは、責任を取りたくない表れであり、日本の代表的なメガバンクとしての姿勢を疑う。発覚後の対応もあまりにもずさんで稚拙だ。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131009/crm13100900440003-n1.htm
企業の社会的責任(CSR)が言われて久しい。
みずほ銀行のこの事件を、特殊なものと見るか、普遍的なものであって表面化したのは氷山の一角であると見るか?
私には底知れぬ闇のように感じられる。
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