田中将大と稲尾和久/「同じ」と「違う」(61)
プロ野球の日本シリーズ第1戦は、巨人が勝利した。
2-0というのは、少なくとも圧勝というわけではない。安打数では楽天の方が多かったが。勝負のアヤが巨人の方に傾いたのだろう。
今年の日本シリーズで、原、星野両監督は、先発投手を予告することで合意した。
今年の楽天を代表するのは何といっても田中将大投手だろう。
星野監督は、いろいろな条件を勘案した上で、敢えて則本昂大投手を初戦に充てた。
決して奇策というわけではない。
新人ながら、WBCの疲れが残る田中に代わって開幕投手に抜擢され、シーズン15勝というエース級の成績を挙げている。
今日の試合でも、巨人打線を十分に抑え込んでいた。
第2戦は、楽天は田中、巨人は菅野智之と予告されている。
今年のプロ野球界の話題は、マー君こと田中将大投手が席巻した。
抜群の成績で東北楽天ゴールデン・イーグルスをパリーグ覇者に導いた。
開幕からクライマックスシリーズ(CS)の1勝を含め無傷の25連勝、昨年8月からの通算は29連勝という記録を残した。
最優秀防御率(1.27)、最多勝利、勝率第1位の三冠王は文句なし、他の追随を許さない。
2013年のプロ野球が、「田中将大の年」として記憶されることは間違いない。
勝負強さは天性のものといえよう。
かつて楽天の監督を務めた野村克也氏から、「マー君、神の子、不思議な子」と言われたほどである。
田中投手の成績は下表の通りである。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3270
今年の成績は2011年とよく似ているが、奪三振数が大きく異なる。
田中投手には剛腕のイメージもあるが、決して単なる剛腕ではない。
「力まかせに投げていない証拠。リラックスして投げ、三振は、欲しい時に狙っている。シーズンを通じて、体への負担を少なくした省エネ投法で安定した力を出すのにつながった」と、多くのスポーツ科学の専門家は分析する。
投手の体調は、登板のたびに異なり、すべて好調ということはありえない。その好不調の波を可能な限り小さくし、不調のときにきちんと対処する技術を持っているか、もっていないかが、一流と二流を分ける大きな壁となる。今年の田中投手にも、もちろん好不調の波があったが、その差は極めて小さく、悪い時はきちんと修正していた。ここに負けない秘密がある。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3270?page=2
私たちの世代には、「神の子」で甦る言葉がある。
「神様、仏様、稲尾様」と言われた稲尾和久投手である。
入団1年目(1956年)に21勝6敗。防御率1.06で最優秀防御率。
2年目(1957)年は、35勝6敗、防御率1.37。
3年目(1958)年は、33勝10敗、防御率1.42。
4年目(1959)年は、30勝15敗、防御率1.65。
5年目(1960)年は、20勝7敗、防御率2.59。
6年目(1961)年は、42勝14敗、防御率1.69。
3年連続で30勝以上と1961年の42勝は、前人未到であり、絶後であろう。
今とは選手の体調マネジメントの考え方が違うが、けた外れの成績である。
稲尾の「鉄腕」という愛称は、アトムと共に少年の憧れだった。
特に、1958年の日本シリーズは、ジャイアンツを相手に3連敗の後の4連勝というミラクル勝利の原動力だった。
⇒2007年11月14日 (水):稲尾和久さんを悼む/追悼(3)
比べるのは無意味であるが、今年の田中の成績は、稲尾を彷彿とさせるものと言えよう。
仙台に本拠地を構える東北楽天ゴールデン・イーグルスにとって、田中投手の活躍とリーグ優勝はこの上ないプレゼントであったといえよう。
稲尾は、西鉄ライオンズという福岡の野武士集団の中で活躍した。
紳士集団であることを義務付けられたジャイアンツのアンチテーゼだった。
同じように、新興の東北という地方球団であることに因縁のようなものを感じさせる。
日本シリーズの結果がどうなるかは現時点では神のみぞ知るところであるが、反主流好みの私としては、是非、東北楽天の勝利でプロ野球シーンの幕を閉じて貰いたいものだ。
田中投手の出来がカギになるのは間違いないだろう。
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