幼児のアイドルアンパンマン・やなせたかしさん/追悼(37)
「アンパンマン」などの作品で知られる漫画家のやなせたかしさんが亡くなった。
本名・柳瀬嵩、享年94歳で漫画界の最長老だった。
東京新聞10月16日
アンパンマンは、ほとんどの幼児がお気に入りになるキャラクターだ。
ほとんど楕円だけで構成される単純とも思えるデザインのどこに惹かれるのであろう。
私の孫も、やっと目が見え始める頃から、アンパンマンのぬいぐるみ等のグッズに囲まれていればご機嫌だった。
アンパンマンは、被災地の人たちを元気づけもした。
http://anpanman.jp/sekai/
本能だけで生きているような赤ん坊が、アンパンマンのストーリーを気に入って好きになるということはないはずである。
視覚的な印象以外に考えにくい。
Wikipedia-アンパンマンから、成立の経緯や人気の秘密を探ってみよう。
原型作品は、1969年に「PHP」誌に連載されていた(大人向けの)読み物『こどもの絵本』(単行本のタイトルは『十二の真珠』)の第10回連載「アンパンマン」(10月号掲載)。
1973年、これを発展させたキャラクターとして、あんパンでできた頭部を持つ「あんぱんまん」が「キンダーおはなしえほん」(フレーベル館)10月号に登場した。
1975年、キャラクター名を片仮名に変更した続編の絵本『それいけ!アンパンマン』を出版。
絵本のアンパンマンは当初、貧困に苦しむ人々を助けるという内容であり、未就学児には難解な内容で、編集部や批評家、幼稚園の先生などから酷評されたが、次第に子供たちの間で人気を集め、幼稚園や保育園などからの注文が殺到するようになった。
絵本がシリーズを重ねていくに伴い、アンパンマンの仲間や敵のキャラクターが増えていった。
多くのキャラクターの中で、準主役は、敵役の“ばいきんまん”だろう。
バイキン星からやって来た悪者であるが、いつもアンパンマンにやっつけられてしまう。
やなせたかしさんの作品の根底に戦争体験がある。
「正義の味方というなら、まず飢えている人を救わなくては」というのが、やなせさんの言葉である。
アンパンマンが自分の顔をちぎってみなに分け与えるのは、飢えている人を救うためだ。
その結果、自分も傷つくのである。
やなせさん語録から。
「正義は逆転する。A国にとっての正義がB国にも正義だとは限らない。では、逆転しない正義は何かといえば、飢えている人を助けることなんじゃないか。政治だって、飢え死にする人がいるなら、どこかまちがっているんですよ」
http://www.asahi.com/culture/update/1015/TKY201310150272.html
正義における相対性と絶対性と言えようか。
声高に「倍返しだ!」といって、敵をやっつけるのとは一線を画した成熟した視線である。
戦場での悲惨な体験や多くの死を目にしてきたことによって生み出された優しさではなかろうか。
合掌。
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