再稼働の前に原賠法の実質の整備を/原発事故の真相(90)
福島第一原発事故からもう直ぐ2年7カ月である。
民法の損害賠償請求権の消滅時効は3年だが、東電の広瀬直己社長は、請求権の消滅期間を過ぎても損害賠償に対応する意思を示している。
しかし、5月に成立した時効中断に関わる特例法は、原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てた項目について、和解仲介手続きの打ち切り通知を受けた後、1カ月以内に民事訴訟を提訴した場合に限定している。
⇒2013年9月14日 (土):損害賠償は実態に即した運用を/花づな列島復興のためのメモ(261)
一方、政権は再稼働に前のめりになっている。
もし、再び事故が起きた場合の備えはあるのか?
もちろん、事故が起きるようなことがあってはならないであろう。
そのためにも、安全審査は厳格に行われるべきだろう。
ところが、安全審査は再稼働の要件ではないという意見も出始めている。
日本経済新聞9月25日付の安念潤司・中央大学教授の意見である。
本来、運転中の原子炉を停止させるためには、当局が原子炉等規制法に基づいて運転の停止を命令するか、あるいは原子炉設置許可を取り消すかしなければならない。だが現状では、こうした処分を受けた原子炉は存在しない。電力各社には、原発の運転を停止していなければならない法律上の義務はないのである。
・・・・・・
もっとも、本年7月8日「新規制基準」が施行された結果、各電力会社はこれに適合すべく、原子炉関連の機器の新増設などの措置をとらなければならなくなった。・・・・・・しかし、これらの許認可申請のために、電力会社は原子炉の運転を停止する法令上の義務を負うわけではない。許認可手続きと原子炉の運転は並行して行えるのである。
そして、原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)では、「異常に巨大な天災地変」によって生じた損害は免責されるという規定により、東電が損害賠償責任を負うか否かも未確定であるとする。
だから、東電が損害賠償責任を負わないか、負うとしても十分に限定的ならば、柏崎刈羽発電所の再稼働で弁済可能である可能性がある、と言う。
だから、柏崎刈羽を稼働させよ、という論旨である。
まったくもって、本末転倒の主張というべきであろう。
確かに、法律の文言上は、安念教授のような意見も成り立つのかも知れない。
しかし、現実に、事故は起きているのである。
そして、事故により、避難生活を余儀なくされる中で、不幸にして亡くなられる方も少なからずいる。
⇒2013年3月13日 (水):原発関連自殺の実態/原発事故の真相(58)
⇒2013年3月30日 (土):避難生活のストレス/原発事故の真相(65)
そういう中で、再稼働によって損害賠償の原資を捻出するのが許されるのであろうか?
世論の反発を招いて撤回を余儀なくされた自民党の高市早苗政調会長の原発再稼働論と同根の発想だと思う。
⇒2013年6月19日 (水):高市発言の思考の文脈/原発事故の真相(73)
自動車事故について、事故が起きた時に発生するであろう損害賠償の負担に備えるため、保険に入ることは庶民ですらよく承知している。
しかるに、原子力事故についてはどうか?
福島第一の事故を受け、2011年8月に、国会で原賠法を「1年をめどに見直す」と決議したのに、期限を1年以上過ぎても、ほとんど検討が進んでいないという。
東京新聞10月7日
自動車の場合ですら、保険に入らずして運転をするのは非常識である。
まして、原子力発電においておや。
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