園児津波訴訟と原発事故不起訴/花づな列島復興のためのメモ(263)
石巻市の私立日和幼稚園の園児5人が、東日本大震災の津波に巻き込まれた送迎バスに乗っていて亡くなった。
遺族が、園の対応に安全配慮義務違反があったとして損害賠償を求めた訴訟において、仙台地裁は、園側の法的責任を認めて計約1億7700万円の支払いを命じた。
送迎バスが津波に巻き込まれた経緯は以下のようである。
日和幼稚園は、標高23メートルの場所にあった。
送迎バスは山側と海側の別々のルートを運行していたが、大震災前に一本化された。
犠牲になった5人の園児らは全員山側に住んでいたから、園にとどまっていれば津波を免れた。
園の防災マニュアルは、園で保護者に園児を引き渡すと定めていた。
園側は、「みぞれのなか園庭で寒そうにしていた園児を早く保護者に送り届けたかった」し、大津波の予見可能性はないと主張した。
しかし、判決は「千年に1度」の巨大地震の発生を予想できなかったとしても、実際に体感した以上、津波の危険性があることを考慮すべきだったと指摘した。
もちろん、園には園児の為に良かれと思う気持ちはあっても、悪意のあろうはずがなかった。
しかし、判決は「津波の危険性は予見できた」とした。
何とも悩ましい判断であるが、遺族の立場に立てば、園の責任は当然であろう。
幼稚園児にとっては、園の判断以外に頼るものはなかったのである。
まだ、判断能力のない園児が津波に巻き込まれ、マニュアル通りに対処していれば避けられたのである。
私は昨年石巻市を訪ねた折、日和山から被災地を見たことがある。
幼稚園は、日和山の一角にあるのであろうか。
大川小学校では、胸の痛くなるような衝撃も受けた。
⇒2012年8月27日 (月):大川小学校の悲劇と避難誘導の難しさ/因果関係論(20)・みちのく探訪(1)
幼稚園にとっては厳しい判決である。
しかし、原発事故訴訟では、誰も起訴されていない。
⇒2013年9月11日 (水):人災と不起訴の間/原発事故の真相(84)
「想定を超える津波だから、刑事責任を問えない」ということである。
幼稚園と原発施設では、比べようもないかも知れない。
しかし、少なくとも原発施設に関する注意義務は、レベルが異なっていることは確かである。
改めて、不起訴でいいのか、ということが問われるべきではないだろうか。
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